ラリーパパ&カーネギーママ
スロウ・ビートに乗せて〈夢の街〉へと誘うファースト・アルバム『ドリームズヴィル』
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「好きなジョー・ママやキャラメル・ママにあやかって、パパとかママのつく名前にしようと……あとは駄洒落です。ラリパッパと勝手気まま」(チョウ・ヒョンレ、ヴォーカル/ギター:以下同)なんて、気負いのないところで聞き出したバンド名の由来。
「それに、モテたい!というので始めたクチですから」。
そのわりにはじっくりと含蓄のある歌と演奏。世のファスト・ビートなんてどこ吹く風のスロウ・ビートに乗せて、大らかに彼らの風景は動いてゆく。それは例えば、かつて狭山時代の細野晴臣あたりが、そのまた先の懐深きアメリカン・ドリーマーたちが見ていた景色に、いまにもつながっていくかのようだ。
「日本語特有の言葉の持つリズム感をどう扱うかにおいて、そういった人たちの試みはすごくいい刺激になりました。でも同じ景色を見ていると実感したことはないです。詞を書くときは部屋にいながら違う季節や時間について思い描いたりします。その作業やメッセージを風景に託すところは似てるのかも」。
そんな距離を埋める想いが歌を育んでいるのだろう。さらに彼らを彼らたらしめるディスタンスはもうひとつある。
「僕とギターのキム・ガンホ、キーボードのキム・スチョリのルーツは朝鮮半島にあります。3人とも民族学校に通い、高校で知り合いました。民族学校というのはとても閉鎖的な空間です。だからこそ時代に左右されず、気に入った音楽に素直に飛びつけたんだと思います」。
そうして辿り着き、描ききった新世界を彼らは『ドリームズヴィル』と名づけた。
「ひとつの街をいろんな角度から覗いてるような気になりました。僕らが想い馳せた〈夢の街〉を音にして詰め込んだ一枚です」。
とすると、早々〈夢の街〉を見つけてしまった彼らの行方は?
「〈喫茶ロック〉に入れてもらったり、〈春一番コンサート〉に出演できたり……そんなふうに聴こえるのかなあって感じです。今回は、メンバーそれぞれの個性をより深く理解できたので、お互いに耳を傾けて気持ちよく楽しむだけです。たぶんそれがいちばんかっこええんやと思います」。
バンド名の由来にもなっているジョー・ママの70年作『O Sole Mio』(ワーナー)