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インタビュー

Paul Weller

多くのコラボレーションを収録し、ユニバーサルな視点を獲得した新作が登場!!


 永遠のブリット・ロック兄貴、ポール・ウェラーの新作『Illumination』、いまの彼だったら充実したアルバムを作ってくるのはわかっていたが、期待をはるかに上回るものが出てきた。

 アルバム全体からとても自然なライヴ感が立ちのぼり心地良い。たぶん一昨年からギター1本のソロ・ライヴをやった経験が、改めて楽曲そのものの魅力や、ナマ演奏と向かい合わせになることの素晴らしさを再認識させたのだろう。そして4人の子を持つ父親としての意識が、この争いや多くの問題に直面している地球と対峙し〈ユニバーサル〉な視点に立った歌を産み出させる結果となった。そのアルバムの根底にあるキーワードは、あらゆる意味での〈希望〉だったという。

「タイトルの『Illumination』というのは、ひとすじの希望を意味しているんだ。その希望には戦争を止める力も世界を変える力もないかもしれない。ただ、一人の人間の心を明るくしたりインスピレイションを与えることはできると思う。それが連鎖反応を起こして、その人たちが今度はまわりの人を明るくしたり、インスピレイションを与えていってくれ、それが世界に拡がっていってくれたら〈力〉になると信じているんだ。それって昔からある普遍的な考え方だし、世界を覆うスピリチュアルな愛みたいなものについて触れていることなんだ」。

 言葉にするとあまりに当たり前のようなものだが、これを歌詞、楽曲として新鮮に聴かせるのは、ほんとに難しい。ある意味ではベテランになればなるほど、困難にもなる。その部分をウェラーは、オアシスのノエル・ギャラガー、ステレオフォニックスのケリー・ジョーンズ、そしてヌーンデイ・アンダーグラウンドのサイモン・ダインといった連中とのコラボレイトによって、自分の中に新しい風を起こし前進してきている。またそうした出会いのスリルを心から楽しむことで、ウェラー自身も思いがけなかった何ものかが引き出され、アルバムの魅力となっている。

「アルバムを聴いておもしろいと思ったアーティストとは積極的に誰とでもやってみたいんだ。一緒にやって何かを得るモノがあるアーティストとはね。反対に俺のほうからも何かを提供できたらと思うし。そのためには誰とでもオープンにやってはいきたいんだ。なにごともギヴ&テイクだと思う。まあ俺のほうが少しは経験があるかもしれないが、皆が自分なりのアプローチの方法を持っているし、俺にも俺のアプローチの方法があるわけだから、ときどきそれをミックスできればと思うんだ。そこから何かを産み出せたらってね」。

 ブリティッシュ・ロックの歴史までをも踏まえたスケール感のあるアルバムを創り上げたのは、こんなオープンな姿勢があったからだろう。それも全曲、ライヴでさらに魅力を増しそうな曲ばかりというのが、この人の現在の充実ぶりを伝えてくれている。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年09月26日 15:00

更新: 2003年02月13日 11:24

ソース: 『bounce』 236号(2002/9/25)

文/大鷹俊一