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インタビュー

キングギドラ

断言しよう。KGことキングギドラのアルバム『最終兵器』は今年のヒップホップのベスト・アルバムになること間違いなし。疑いない傑作だ、これは。

 

 イントロダクションの“最終兵器”における、K DUB SHINEの滑らかだが迫力のある語りがそのままラップになっていくフロウを聴くときのぞくぞくする感じは、まさにこれがヒップホップだ!と、叫びたくなる快感を聴き手に与える。ここではビートに乗った言葉が自由自在に操られ、それが聴き手をハイにさせる。キングギドラはそのファースト・アルバム『空からの力』でヒップホップを定義した。Rhymesterが彼らのセカンド・アルバム『EGOTOPIA』でヒップホップを定義したように。そして、それをまた改訂するように、まるで合衆国のヒップホップの80年代後半から90年代前半の黄金時代──次々と出て来る傑作がヒップホップをあの頃は定義していたのだが──を思い出させるように、2002年、キングギドラはまたやってのけた。

 定義というのは、もし、ヒップホップが何が何のことやらわからなくなったら、そこに戻ってくればいいという原点である。

 もし、君が情報の洪水のなかで「一体、何がヒップホップなんだ?」とわからなくなったとき、戻って来る場所は、ストリートである。そして、そこでキングギドラは育ち、そこからの視点を忘れずに、“リアルにやる”。

「ルーツというかさ、おそらく向こうの、いまヒップホップやってる奴らと俺らは同じぐらいの時期にヒップホップにはまって、ずっと同じように同じヒップホップで育ってきてるから、当然の結果でしょ」(K DUB SHINE)。

「そうだよ」(ZEEBRA)。

「80年代後半の黄金時代、そこで聴けるものは全部聴いていた。分け隔てなく」(K DUB SHINE)。

「ホント、聴けるものは全部聴いてたよな」(ZEEBRA)。

「(ファースト・アルバムの頃から合衆国のヒップホップがやれることは)全部やれてないと、出すには早いかなと思ってたし、出すって決めたからにはもう向こうの当時のマーケットに対してもある程度評価されるものしか出してないよ」(K DUB SHINE)。

「そうだね。だから、はじめっからヒップホップを自分たちの音楽に採り入れるとかではなく、ヒップホップを、やる。そこですね、私たちは。そこがポイントだと思ったんで。まずはライフスタイルであると思うし、そこでそのカルチャーを自分たちなりに1回噛み砕かなくては消化できないし、自分たちのなかにどんどん吸収しなくてはならないから」(ZEEBRA)。

「ヒップホップになる、ために音楽をやっていたからね」(K DUB SHINE)。

 君たちはヒップホップで育った。

「そうだね」(ZEEBRA)。

 ファースト・アルバムから今回のベスト・スマッシュのひとつ“トビスギ(Don't Do It)”まで、社会的なメッセージから“友情”のようなパーソナルな視点の曲まで、言いたいことはどんなテーマでも、彼らははっきり、きっちり言ってきた。これこそ、ヒップホップであり、その旨味であり、その痛快さだ。ほかではない。

「エデュテイメントをやりたいっていうのは俺はいつでもあるし」(K DUB SHINE)。

 ポップ・ラッパーはポップ・ラッパーでいいと思う。そういう存在はいつでもいる。

「でも全部十把一からげにああいうのが全部ヒップホップだっていうことになると、俺らはちょっと待てよ、ってことになるよ」(K DUB SHINE)。

 覚醒剤の蔓延から友人の大切さまで、痛快なボースティングから“公開処刑”まで、全13曲、最終兵器のボタンはすでに押されている。

PROFILE

ZEEBRA、K DUB SHINE、DJ OASISの3人で93年に結成。95年にリリースされたファースト・アルバム5日本のヒップホップ・シーンに大きな衝撃を与える。96年にシングル“影”と同名のヴィデオをリリースし、グループとしての活動を停止。その後、各自がスタートさせたソロ活動も輝かしい成果を残す。そして満を持して2002年4月にグループを再始動。リリースされた“UNSTOPPABLE” “911(Remix)”“ジェネレーションネクスト”といったシングルがチャートの上位に食い込むなど、注目を集める。INDOPEPSYCHICSとしても活動していたD.O.IやDJ WATARAI、BOY-KENなども参加したニュー・アルバム『最終兵器』(DefSTAR)がリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年10月31日 16:00

更新: 2003年02月13日 12:12

ソース: 『bounce』 237号(2002/10/25)

文/荏開津 広