こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

インタビュー

JUDE(浅井健一)


 浅井健一という人間にちょっと先入観を持っていたというか、持たされていたというか。いずれにせよ、JUDEの2枚のアルバム『Charming Bloody Tuesday』と『Dirty Animal』を聴いたいまは、霧が晴れたようなスッキリした気分だ。なんだ、構えて聴く必要なんかない。楽しいロックンロールがいっぱいじゃないか、というわけだ。

「ありがとう。音楽を作って、人の心が楽しくなるんだったら最高だね。くじけそうなときに聴いたらいいかもね」(浅井)。

 バンドのプロフィールは、あちこちの雑誌で紹介されてると思うので割愛するが、3人が揃ったのが今年の3月だというからすごいペースである。歴戦のツワモノであるベースの渡辺圭一も、ドラムスの池畑潤二も、このバンドの生命力の強さにみずから感動している口ぶりだ。

「短く感じてますよ。でも、やることはたくさんやって……かどうかもわかんないくらい、作品として出来上がってるから。素晴らしいですね。自分のなかにある、昔聴いたメロディーとか、なんか懐かしいものと新しいものがすごく交錯して、いい形になってる。やってることはぜんぜん変わらないのに、すごく新鮮に感じる。だからきっと、新しいんでしょう」(池畑)。

「出てくる音自体、すごく気持ちがフレッシュになれるものなんで。自分の音も、意外なところから沸き立ってるところもあるし。2人に感化されたり影響を受けたりしてると思うんですけど。普段はこんな音出ないな、っていうのをあらためて発見してます」(渡辺)。

 アルバム2枚で全21曲。そのなかには“シルベット”のようなポップなメロディーを持つものや、アラビアン・レゲエとでも言いたい“バスケットロードからの脱出”や、〈テキーラ!〉という陽気なかけ声が楽しいサーフ・インストっぽい“カリブの海賊の宴会”や、スロウなバラードの大作“愛”や、1曲たりとも同じパターンの曲がないほどバラエティーに富んでる。もちろん、すべてが浅井健一のなかから生まれてきた曲だ。

「年々、増えとる(笑)。コツはべつにないけど。自分のなかに行くんじゃなくて、世界中が根源で、世界中のあらゆる感情とか出来事を、歌に変換してるだけなんじゃないかな。だから、自分のなかから出すんじゃなくて、自分の向こう側の世界から回ってきてる。だから、尽きることはない。世界がなくならない限り。か、自分が生きてる限り」(浅井)。

 こう言ったあとに彼は、「エラそうだけど」とポツリと付け加える。これだけ話せばもういいだろうと、早く曲作りのリハーサル・スタジオに戻りたくて腰が浮いてる感じだ。そこを引き止めて、このバンドが持ってるマジックについてもう少し突っ込んでみる。

「エネルギーを発散してる人のそばに行くと、元気になったりするじゃないですか。そういうものになればいいなと思ってます。楽しんでるのは楽しんでるけど、そのなかで、エネルギーを放出しながらまたべつのエネルギーを取り入れて、より強大になってる。それは強さとかじゃなくて、やさしさとか、そういうものが入ってくればいいなと思う」(池畑)。

 この話も、浅井健一の言う「歌は尽きない」理由と同じようなことじゃないか、とふと思う。確かにJUDEのロックには、エネルギーが循環してゆく大いなるサイクルの存在を感じる。

「なんか、自然に反応して出てきてる感じですね。今日もカッコイイ曲が出来たし。ぜんぜんね、まだアイデアはすごくいっぱいあって、いまはプロモーションをずっとやっているし、ツアーもやらなくちゃいけないから、レコーディングは来年のアタマですね」(浅井)。

 なんとさらにペースは上がりそうだが、ぜんぜんムリしてる感じがないのもいい。ツアーもすげえ楽しそうだから絶対観に行こう。

PROFILE
ブランキー・ジェット・シティ解散後、かねてからのソロ・ワークスであったSHERBETSやAJICOでの活動を経てきた浅井健一(ヴォーカル/ギター)と、元ヒートウェイヴの渡辺圭一(ベース)、元ザ・ルースターズ(ドラムス)の池畑潤二によって、2002年3月に結成されたJUDE(ユダ)。6月にはファースト・シングル“DEVIL”をリリース。7月からは早くもライヴ・ツアーを敢行、〈FUJI ROCK FESTIVAL'02〉をはじめとするロック・フェスティヴァルにも出演し、話題を集める。先ごろリリースされたセカンド・シングル“シルベット”に続いて、このたび待望のアルバム『Charming Bloody Tuesday』『Dirty Animal』(共にSexy Stones)が同時リリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年10月31日 16:00

更新: 2003年03月10日 11:57

ソース: 『bounce』 237号(2002/10/25)

文/宮本 英夫