インタビュー

museum of plate

ピアノの調べと共に遠くまで――ワイルドでディープなサウンド・トラヴェルの始まり!!

 孤高のピアニスト=塚本サイコのソロ・プロジェクト、museum of plateの通算3枚目にあたるフル・アルバム『The Neutral Plate』が完成した。

「去年1年間、すごいライヴをやったんですよ。地方とかも含めると月に何回かずつくらい。で、AIちゃん(AOAのol Ai bi)とか(ボアダムスの)ヨシミちゃんとかとのコラボレーションなんかを通じて、気分的にも今回の生一発録りって手段に辿り着いたんですね」。

 言葉どおり、本作はたった1回の生録音をベースに編まれている。先述のAIやヨシミ、Chari Chariこと井上薫などを迎え、陰と陽、絶望と希望が渦巻く広大な宇宙へと旅を始めるのだ。けど、ともすれば〈癒し系〉なんて安っぽい言葉で括られてしまいそうなきらいもある。

「心の旅ですね、たぶん(笑)。やっぱりリスナーがそれぞれ想像を膨らませてもらえるような、ある種の幅みたいなものは残しておきたくて。投げて返してもらうっていう感じで考えるならば、癒し系っていう風に思われても全然構わないですよ。気持ちとしては、今回のアルバムって1人で家にこもって作ったタイプのものではないので、作った際の気持ちはすごい暖かいものだったんですね。でも、1回で録らなきゃいけ
ないから緊張感は絶えずあったんですよ。だからその暖かみと緊張感で、ちょうど±0ぐらいの温度感になってるかなぁって(笑)」。

 確かに前作『像音』と比べれば、あきらかに暖かな作品だ。前半は心の深部へとリスナーを引きずり込むが、中盤からはドリーミーに甘く儚い世界へと導いてくれる。

「私が今回のアルバムで成し遂げた偉業は“Minas”のヨシミちゃんとDSK(Port of Notes)のデュエット(笑)。あり得ないでしょ? この曲はライヴでカヴァーしてたんですけど、ライヴのはちょっと気軽過ぎたんで……」。

 先述のミルトン・ナシメントの名曲カヴァー“Minas”へ辿り着く頃には、皆この旅の虜となっていることだろう。言ってみれば、曲単位ではなく、アルバム1枚をとおしてこそこの作品の魅力が理解できるワケだ。

「作り終えて、1枚に全曲ならべてみて、長いって言われるのはおおよそ見当がついていたんですけど、マスタリング・スタジオの方に〈コレ1枚通して聴くと大変だねぇ〉って言われて、はじめてそういうもんを作ったんだなぁって(笑)」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年11月28日 13:00

更新: 2003年02月07日 15:28

ソース: 『bounce』 238号(2002/11/25)

文/白水 健寛