インタビュー

The Datsuns

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 君の部屋には誰のポスターが貼ってある? その横に(もちろん剥がしてもいいけどさ!!)下品でやかましくて最高にクールなこの連中のポスターを貼ってみてはどうだろう?

 ダットサンズ――いわずもがな、日本人なら誰もが知ってるあの車から名前を拝借した彼らは、ニュージーランド出身の4人組。しかも、全員名字が〈ダットサン〉だっていうんだから、その音は想像つくでしょ? ラモーンズ、レッド・ツェッペリン、MC5、AC/DC……などなど、ベタなビッグ・サウンドをブチかましてきた名バンドたちの、そのまたベタな部分をギュギュッと詰め込んだような……と言えばわかってもらえるかな? スピーカーを突き破るほどにラウドなギター・リフがギャギャーン!!と飛び出してくる興奮。これこそが〈ロック〉だ、間違いなく!!

 ダットサンズの結成は彼らが高校生のころ。90年代中期のことだ。

「ニュージーランドで俺たちみたいなスタイルのグループっていままでいなかったんだよ。でも正直な話、当時はロックが流行ってなかったから、〈アホなロック・グループ〉って冷たく見られてた。で、どうやら最近ロックがまた流行っているようで(笑)、突然みんなが俺たちに注目しはじめたのさ。いままで見向きもしなかったやつらが大騒ぎして俺たちのライヴを観に来るんだから……まったく笑える話だぜ!」(ドルフ・デ・ダットサン:以下同)。

 そう、彼が言うようにロックは〈流行って〉いる。そんな〈流行〉の功労者がホワイト・ストライプス。実はダットサンズが注目を集めるきっかけを作ったのが彼らだ。2000年に行ったホワイト・ストライプスのオープニング・アクトに抜擢されたダットサンズは、2002年にも彼らとともにツアーを行い、今度はアメリカのキッズたちの心を掴んだ。

「あの当時(2000年)、ホワイト・ストライプスはまだ無名だった。昔から俺らは互いの音楽性を認め合っていたから、あのツアーはホントに楽しかったぜ! その後、突然連中は大ブレイクして、オーストラリアとアメリカ・ツアーの前座として俺たちを誘ってくれたんだ。最初は50人くらいしか入らない小さな会場で始まって、段々と1,000人、2,000人……とおもしろい具合に会場が大きくなっていったんだ」。
 そんなエピソードからもわかるように、彼らはライヴ活動を行いながらその認知度を高めてきた、いわば筋金入りのライヴ・バンドだ。口コミで広がってきたというその人気はでっちあげのものなんかじゃない。

「とにかく俺たちの場合、〈ライヴありき〉なんだよね。アルバムを聴いて俺たちのファンになった人なら俺らのライヴは絶対楽しめるぜ! ファンたちも大合唱で、毎回最高潮に盛り上がるんだ」。

 そして届けられたのがデビュー・アルバム『The Datsuns』。デビューにあたっては当然のようにメジャー・レコード会社の血で血を洗う争奪戦が繰り広げられ、各メディアもこぞって彼らのことを取り上げた。……だが、彼らはダットサンズ。まあ、そんなにカッコよくロックンロール・スターを演じられないわけで、デビュー・アルバムの録音中にはこんな〈事件〉も。

「ちょうど同じスタジオでロッド・スチュワートもレコーディングをしてたんだけど、ある日トイレに行く途中、ロッドがいるスタジオの前を通ることになって、思わず〈If You Want My Body And You Think I'm Sexy〉って“Do You Think I'm Sexy”(ロッドのかつてのヒット曲)を大声で歌ったんだ。そうしたらロッドがカンカンに怒っちまって……。俺たちに悪気はなかったんだけど、どうやらケンカを売ってるんだと思われたみたいだね!」。

 そんなガラの悪さも十分な(?)彼らのデビュー・アルバム『The Datsuns』。聴くにはそれなりのロックンロール・エチケットが必要だ。えっ、なんのことかって? もちろん、爆音で聴けってことさ!!

PROFILE

95年、ケンブリッジ出身のドルフ・デ・ダットサン(ヴォーカル/ベース)、マット・ダットサン(ドラムス)、クリスチャン・ダットサン(ギター)、フィル・ダットサン(ギター)でバンドを結成。97年には地元のラジオ番組が主催するコンテストに優勝し、現在のバンド名へと改名する。2001年、“Super Gyration”など3枚のシングルを発表。2002年の初頭にはアメリカやイギリスでツアーを敢行、ガレージ・ロック・ムーヴメントも同調して大成功を収めた。メジャー・デビューを前に英NME誌の表紙を飾るなど、大きな期待が寄せられるなか同年10月にはイギリスでファースト・アルバム『The Datsuns』(V2)を発表。このたびその日本盤がリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年01月08日 11:00

更新: 2003年02月20日 16:01

ソース: 『bounce』 239号(2002/12/25)

文/大石ハジメ