インタビュー

Solange



「ロックワイルダーから学んだこと? そうね、スターバックスのフラペチーノが最高に美味しいってことかしら(笑)」とのたまうソランジュ・ノウルズ、16歳。ゲッ、なんて生意気な!とフツーなら思うところだが、このソランジュちゃんに限っては、もともとがフツーじゃないだけに許せてしまう。デビュー・アルバム『Solo Star』で作詞・作曲はもちろんのこと、プロデュースからヴォーカル・アレンジまでを手掛けてしまう天才少女。歌がバッチシなのも言うまでもない。加えてお姉さんのビヨンセ(デスティニーズ・チャイルド)同様、とびきりの美少女ときた。もういいこと尽くしで、そりゃ自信たっぷりでも不思議はないってもんだろう。

「そうなの、私って恐いもの知らず。好きなことをやって、好きなこと言って、勝手気ままって性格なのよね。姉なんかを見ていると、いつも周囲に気を遣っているし発言なんかも慎重で、〈うわぁ、凄いなぁ〉って思うけど、私は正反対(笑)」。

 いい加減そうなことを言いながらも、きちんとお姉さまを立てることを忘れないソランジュちゃん。本人が言うほどぶっ飛んでいるわけじゃない。

 歌やポエムを書き始めたのは7歳の頃。13歳の時に初めてスタジオに入って以来、プロデュース・ワークの虜に。お父様がマネージャー氏であるデスチャと共にダンサーとして世界中を回って、ピンチヒッターとしてデスチャの一員を務めたこともある。つまり若くしてすでにキャリアはたっぷり。そんな磨けば輝くダイヤモンドを実力最優先のアメリカ音楽業界が放っておくはずがない。ティンバランドにネプチューンズ、ロックワイルダーにアンダードッグスといった当代きってのプロデューサー陣、キャンディにリンダ・ペリーといった先鋭ライター、B2Kにリル・ロミオ、N.O.R.E.といった売れっ子パフォーマーたちが続々と集まってきた。なかでもネプチューンズによる“Crush”は、最近彼らが手掛けた作品のうちでもピカイチの出来。ソラちゃんの初々しい魅力が満開だ。背伸びしたセクシーなイメージを打ち出そうとする若手シンガーが多いなか、ソラちゃんの少女らしさには何だか新鮮なものを感じてしまう。

「私の歌って歳相応だと思うの。私の年代のほかのアーティストたちって妙に大人びたことを歌おうとする傾向があるけど、私の歌う詞は思春期を題材にしたものばかりよ。サウンド的にはこの3年間ずっとデスチャに同行していたから、どうしても聴いてる音楽は大人っぽいものが多いし、そういう影響はあるかもしれないけれど、自分が大人じゃないってことはちゃんと把握している。背伸びする必要なんてないと思うわ」。

 よっぽどしっかりした自分を持ってなきゃ言えない発言でしょ。ちなみに彼女は、ネリーとの共演でソロとしてこれまた凄いことになってるケリー・ローランドのアルバム『Simply Deep』にも参加。こちらではもっと大人っぽい自作曲のプロデュースを手掛けていたりして、使い分けのほうもしっかり。器用なところを窺わせる。

 エンターテイナーとしての大成を目指しているという彼女。目標にしているシンガーは?と尋ねたら、やっぱり最初に挙がってきたのはお姉さんの名前。

「私も姉のようなヴォーカリストになりたいと思っているわ。姉っていうのは現在活躍しているヴォーカリストのなかでもっとも実力のあるひとり、それはまぎれもない事実でしょ。私もその同一線上にいつか並べたらなぁって思っているの」。

 その〈いつか〉が、そんなに先じゃないことだけは確かなようだ。

PROFILE

86年生まれの16歳。デスティニーズ・チャイルドのビヨンセは姉。2歳半からダンス・レッスンを始め、10代初めには早くもデスティニーズ・チャイルドのステージでバックダンサーを務めている。2001年よりデビューに向けたセットアップを開始し、サントラ『Osmosis Jones』に“Solo Star”を提供。2002年には〈Young Power Tour〉のメイン・アクトとして全米をツアーし、デスチャのワールド・ツアーにも同行。サントラ『Like Mike』や『Scoobie Doo』などに楽曲を提供し、ケリー・ローランドの『Simply Deep』では3曲のプロデュースも手掛けている。このたび、ほぼ全曲を自作したファースト・アルバム『Solo Star』(Music World/Columbia/ソニー)がリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年01月09日 10:00

更新: 2003年03月10日 11:52

ソース: 『bounce』 239号(2002/12/25)

文/村上ひさし