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インタビュー

一青窈

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大ヒットを記録した“もらい泣き”に続く、オリエンタルな歌姫によるファースト・アルバム!!


〈ええいああ〉なる〈台湾R&B的母音のサビ〉に強烈な印象を残したデビュー・シングル“もらい泣き”。その、懐かしくも切ない響きを持った歌声は、台湾人の父と日本人の母の間に生まれ、幼い頃から両国を行き来して育った一青窈(ひととよう)の生い立ちそのものをとてもわかりやすい形で伝えてくれた。そして、早くも届けられたファースト・アルバム『月天心』。「もともといちばんよく聴いている」というR&Bをはじめ、ヒップホップ、台湾民謡……など、複数のアレンジャーとのセッションによって具現化された「良い意味でのタイム感の交錯」が新鮮でユニークな表情豊かな一枚に。

「私の音楽の聴き方って、多分ネット・サーフに近いんですよ。いろんなものを平たいところに全部並べて、そこから好きなモノだけをピックアップしていくっていう。ただ歌詞に関していえば、幼稚園の頃から書きためたモノすべてがデータベースで、これも構想26年といって過言ではないくらいで(笑)。ただ、だからこそ〈ブレない〉、そういう自信はありますけどね」。

 いわば「離れて暮らす父親への手紙代わりに」と書き始めた幼い頃の日記が原形。それが両親の他界を経て〈歌う行為〉へと昇華するまでには「対面している人に向かって素直に感情を吐き出すことが怖かった時期もあった」と彼女。

「それを出すことでまわりの人が揺れてしまう……そんな気がして。でも、ちゃんと(出せば)反応してくれる感情があるとわかって、初めて〈歌うこと〉と〈詞を書くこと〉のバランスがとれるようにもなった」。

 例えば、金物屋の店先に並べられたお弁当箱を見ても「蘇る意識はすべて父と母にリンクする」と言う彼女。ラスト“望春風”の詞を、あえて(台湾民歌である)原曲とは逆の〈娘の立場〉から歌う意味ももちろんそこに繋がるものなのだろうが、ある意味それはネイティヴ・アメリカンが使う〈I love you〉の代わりの台詞、〈あなたと同じ血が流れていますよ、同質ですよ〉と言う意味の〈I kin ye〉にも肌触りが似て。彼女の歌が決して自己を満たすためだけのお節介や気休めなどではない、もっと〈日常に染みついた優しさ〉から来るものだということを確かに感じさせてくれるのである。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年01月09日 11:00

更新: 2003年02月13日 16:15

ソース: 『bounce』 239号(2002/12/25)

文/なかしまさおり