インタビュー

小島麻由美

スリリングなセッションを経て、力強いビート感を身につけたアルバム『愛のポルターガイスト』


艶やかに鳴り響くスウィンギーなギターの音色。狂おしくブロウされるサックスのセクシーな響き。そして、ジャズる心のビートを、さらに倍加させるようにして間断なく叩き出される野性的なドラム──いままでになく扇情的かつ肉感的な雰囲気を作品全編から色濃く漂わせることとなった新作『愛のポルターガイスト』。その体感温度はまぎれもなく小島麻由美のアルバム史上、最高値を記録!

「今回は、なんか騒がしい感じのアルバムにしたかったんですよね。とにかく派手な感じで、リズムが強いのをやりたかったっていうか。ドラムがドコスコいってて、ビートが強い感じっていうか。聴いた人がアッパーになれるようなものを作りたかったんだよね」。

いや、まさしく。彼女の脳裏にうごめく、愛すべきポルターガイストが奏でるハード・バップなラップ現象を前に、身も心も始終ヤラれっぱなし。ある種の胸苦しさをも喚起させる、心ザワメクこの感じは一体なに!?

「最近はDVDプレイヤーを買ったから家で映画をよく観てるんだけど、ヒッチコックっぽいのが好きなんですよ。ああいうワクワクしたりゾクゾクするような感じ。サスペンスっぽかったりスパイっぽかったり、そういうのがやっぱり好きなんだよね」。

そんな小島カントクが標榜する、めくるめく音の快楽を見事な手腕でもって具現化しているのが、今や〈小島組〉とも称すべき、塚本功やASA-CHANGをはじめとする腕利きのプレイヤーたち。

「今回はスタジオでセッションしながら作ったんです。まず、みんなで1回リハーサルをして。それからいろいろ仕掛けを作ったり。仕掛けっていうか、まあアレンジなんですけど(笑)。で、何回か演奏している間に曲が良くなったり。そういうことが生のセッションだと本当にありえるのね。それがすごいおもしろかった」。

ヒッチコックばりの微に入り細に入った謎掛けと、ハリウッド大作も真っ青なダイナミズム溢れる作品展開。それにひとさじのスリルを加えているのが、スタジオでのセッションを通して繰り広げられる、メンバー各々の火花が散るようなインタープレイ。

「ミュージシャン同士が、みんな、仲良くない感じが好き。なんか、バトルがありますよ(笑)。私はそう思ってるの。いつもはお互いを立てあったりしてて、なかなかイイ感じなんだけど、いざプレイになるとグッと各々好き勝手にやって。みんな、すごくかっこいいよ。でもね、私は、ASA-CHANGとか塚本さんと、ずっといっしょにやってるから一体感みたいなものをすごく感じてるんだけど、みんなは一体どう思ってるのかな? 私以外にも、いろんな人とやってるからね。……今度、どう思ってるのか訊いてみよう。怒るかな(笑)」。

いやいや、怒りはしないでしょうけど(笑)……監督には座の中心でいつでもドッシリと構えていてほしいものです。なにはともあれ、彼女のこうした無意識過剰な天才性に関わったミュージシャンはもちろんのこと、僕らもこれからずっと翻弄されっぱなしなんだろうなって。 ホント、つくづくそう思う。

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掲載: 2003年01月16日 12:00

更新: 2003年02月13日 12:01

ソース: 『bounce』 239号(2002/12/25)

文/望月 哲