インタビュー

グループ魂


宮藤官九郎といえば、松尾スズキ率いる超人気劇団、大人計画の一員として大活躍。さらには「池袋ウエストゲートパーク」「木更津キャッツアイ」「笑う犬の情熱」などTV番組の脚本や構成を手掛け、今後も予定ぎっしりの売れっ子役者&脚本家&構成作家だ。雑誌の表紙まで飾るなど、もはや時代の顔、端から見たら立派な文化人ですよ。しかーし! 彼はその前に〈男〉だ。革ジャンにリーゼントをキメて、ロケンロー街道を突っ走るグループ魂の一員でもある。バンドのメンバーは、宮藤と同じく大人計画で活動する役者で構成。暴動こと宮藤官九郎、破壊こと阿部サダヲ、バイト君こと村杉蝉之介。この3人を中心にバック・メンバーを加えた総勢7名で繰り広げる新作『Run魂Run』では、パンク、ハードコア、ストレートなロックンロールが疾走! さらに、30代の心情を剥き出しにした歌詞が、爆笑とイイとこついてるねーってな感心を誘い、独特ワールドが展開されてるぞ。

「歌詞は僕個人の思ってること。同世代の男子だったら同じこと思ってるだろって。やっぱり男子ですよ、男子高の文化祭の延長上にあるようなバンドですね……こころざし低いな~(笑)。でも勉強の合間を縫ってバンドやるのと、役者の合間を縫ってバンドやるのはいっしょです(笑)。30歳のクセに10代の気持ちで歌えって言われても無理だし、自分が普段思ってることを歌ったほうがおもしろいんじゃないかな。いい歳してテンションだけは文化祭のまんま。あんまり憧れられない対象ですね(笑)」(宮藤:以下同)。

憧れにならない対象──メンバーにもバイト君ってキャラがいるけど、実際バイト生活の30代なんて切なさたっぷり。でも本人はすこぶる陽気だったりするから素晴しい。そんなダメさ加減と無邪気な心意気が、バンドのテーマとして見え隠れするのだ。

「バイト君はバンドの永遠のテーマですよ。歳だけとって変わらないという僕らの象徴ですね。歳をとるほどくだらなくなっていくからね。僕らのマスコット、大事にしていきたい存在です」。

さて、グループ魂のサウンドにはそこかしこに日本の80'sパンクの影が見え隠れする。そのパクリっぷりにも愛情が感じられ、さらには全体通すとオリジナルなものになってるのが彼らの凄いとこ。宮藤自身がリスペクトする
ルーツは、やはり……?

「もともと、中学~高校のときに聴いてたのは、インディーズ御三家(ラフィン・ノーズ、ウィラード、有頂天)が〈宝島〉にガンガン載ってたころのロック。それがベーシックにある。遠藤ミチロウさんにも言ったけど、スターリンのレコードってエロ本みたいな感覚でしたね。親にバレたらヤバいような雰囲気がカッコいいと思いつつ、歳とって振り返ると笑えるなって。あのころみんなバカだったなって(笑)。でも笑えるっていうのをそのままなかったことにするのもなんだし、ネタにしちゃおうっていうのがグループ魂の始まりなんですよ」。

なお本作には、先日解散したナンバーガールの最後のスタジオ・レコーディングも収録されてるぞ。それが長渕剛ネタのコントというのがまたステキだ。そんな男の心意気が盛りだくさんのアルバム、さて、聴きどころとは?

「曲はもちろん、僕がギタリストとして頑張ってるところは聴いて欲しいですね。けど、上手いと聞こえるところはもうひとりのギタリスト(遅刻こと富澤タク)が弾いてます(笑)。でも、ギタリストとして成長したいなっていうのはありますよ。ARBのKEITHがあの歳でもドラム教わりにいってるって話を聞いて、向上心の大事さを知りました(笑)。まだ僕ら発展途上です。もし、僕が全体のプロデュースだけに専念してたらバンドはもっとバケる可能性があると思う。でもそれは嫌なんで(笑)、僕がプレイすることでそこに歯止めをかける感じですね。あと、〈笑い〉は意識してるので、そのへんは繰り返し聴いてもらいたい。ライヴは微妙に違うと思うので、これ買って聴いてライヴに来て欲しいですね」。

PROFILE

95年結成。メンバーは、暴動こと宮藤官九郎(ギター)、破壊こと阿部サダヲ(ヴォーカル)、バイト君こと村杉蝉之介(大道具)。結成当初は、芝居仕立てのコントや、ギターを弾きながらシャウトする漫談で話題を呼び、TV番組「笑点」にも出演。97年からギター、ベース、ドラムスのサポートを加え、音楽的要素の強いパフォーマンスを披露していく。99年3月にファースト・アルバム『GROOPER』を発表。その後はARB、ナンバーガール、遠藤ミチロウ、氣志團らとも共演し、注目を集める。このたび、待望のセカンド・アルバム『Run魂Run』(ミディ)がリリースされたばかり。また、2003年2月5日には、同アルバムから“竹内力”がシングル・カットされる。

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掲載: 2003年01月23日 12:00

更新: 2003年02月21日 16:06

ソース: 『bounce』 239号(2002/12/25)

文/土屋 恵介