スクービードゥー
「90年前後ぐらいに東京で流行ってたモッズ系のバンド――4人編成でソウルとかリズム・アンド・ブルースのカヴァーをやっているようなバンドに憧れて結成したんです。それで、日本語の詞を乗せてカッコイイ感じっていうのをめざしてたんですけど、とくにロックをやろう!って感じでもなくて。やっぱリズムが効いてて、ダンス・バンド的な要素が残りつつも歌は泣けるみたいな……」(マツキタイジロウ)。
いまここで初めて彼らのことを知った、もしくは知ろうとしているアナタ。いまの発言と右に写る凛々しい立ち姿で、なんとなくでもこのグループの音楽性やら雰囲気を窺い知っていただけただろうか……。
95年に結成。これまでにもインディーから2枚のアルバムをリリースしている彼らの名はスクービードゥー。その名を聞いて、ハンナ=バーベラの生んだアニメーション・キャラクターを思い浮かべた人もいると思うが、彼らはあの弱虫な主人公とは正反対。2002年6月、胸を張ってメジャー・シーンに躍り出てきたのである(そもそもグループ名は、60~70年代に活躍したソウル・シンガー、カルヴィン・アーノルドの曲名ですが)。このたびリリースされるアルバムも『BREAK ROCK』と、張った胸の内が窺えるようなタイトルだ。
「〈ブレイクビーツ〉から派生する意味だとか、〈ロックをブチ壊していく〉とか〈ブレイク・スルーしていくロック〉とか……まあ、いろんな意味にとってもらえればいいかなって」(マツキ)。
とはいえ、『BREAK ROCK』を含めた近作の内容からすれば〈ロックをブチ壊していく〉といったような、強気なニュアンスの方向で捉えてもらっても結構だろう。なにしろ最近のスクービードゥーは、ロック、ソウル、ファンク、リズム・アンド・ブルース、さらにはボサノヴァ、ヒップホップ……それらを隔てる壁を壊し続け、彼らの音楽でしかあり得ないものとして響かせているのだから。さらに、それらマニアックな類も含んだ音楽背景を十分に匂わせながらも、ポピュラリティーというものにしっかりと対峙している楽曲たちは、こぢんまりとした〈ガレージ〉のなかに納まるようなものでは決してないわけで。
「自分たちもいろんな音楽を聴いてるんで、マニアのような人にも〈イイ〉って言ってもらいたいんですけど、それと同じぐらい、それほど音楽に深く興味がない人にも普通に〈イイ〉って言ってもらいたいし、ライヴにもそういう人たちが来て楽しんでもらいたい。いろんな人がライヴ会場に来るなりCDを買うなりっていうのが音楽としてはタフというか健全だなっていう気がするんで」(マツキ)。
さて、CDに刻まれた音のニュアンスを伝えることが第一の使命である本誌としても、技術、戦術、フィジカル、メンタルすべてがハンパない彼らのライヴ・パフォーマンスについて触れないわけにはいかないだろう。スポーツの世界では〈勝負に勝って、試合に負けた〉などという表現をしたりするが、スクービードゥーのライヴ、そのいかなる要素にも〈負け〉は見当たらないのものであるからして。
「常にどのライヴもいいライヴでありたいし、さらに〈すごいライヴをした〉っていう実感もほしい……うん、ライヴがいいのは当たり前かなって思ってて。でも、それだけじゃちょっと満足できないというか、すごいライヴがやりたいし、〈観たい!〉っていう観客的な欲求もあって。盤を作るのもそうだけど、やっぱ無駄なものを世の中に出したくない。こういうのはなくていいだろうっていうものって実際にあったりするし、だったら俺らはそういうことしたくない。ライヴハウスならライヴハウスの中だけで終わってしまうのはもったいないというか、そこで感動したら、それが普通の生活でも活きるような、それぐらいすごい感情が動かないと音楽自体が役に立たないものになっちゃうだろうし、誰もライヴなんて観に来ないと思う。バンドやってるからには、少なくとも自分たちはすごいことをやりたい」(コヤマシュウ)。
PROFILE
95年、マツキタイジロウ(ギター)とコヤマシュウ(ヴォーカル)を中心に結成。R&Bのカヴァーをレパートリーにライヴ活動を開始する。96年に現在のドラマー、オカモト“moby”タクヤが加入し、99年にはシングル“夕焼けのメロディー”、アルバム『Doin' Our Scoobie』を、2000年にはシングル“No.3”とリリースを重ねながら注目を集めていく。2001年に現在のベーシスト、ナガイケジョーが加わり、9月にアルバム『BEACH PARTY』を発表。同作品の高い評価を受け、2002年6月にコンパクト・アルバム『GET UP』でメジャー初リリース。11月のシングル“路上のハードボイルド”に続き、このたびメジャー・ファースト・アルバム『BREAK ROCK』(スピードスター)がリリースされる。
カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2003年02月27日 15:00
更新: 2003年02月27日 17:28
ソース: 『bounce』 240号(2003/2/25)
文/久保田 泰平