インタビュー

Kahimi Karie

フロム・パリ──新作『Trapeziste』で彼女が魅せる新しいスタイル、新しい音楽とは!?


「パリに住むようになってラジオをよく聴くようになったんです。ジャズだけとかクラシックだけとか海賊放送のチャンネルとか、聴きだしたらおもしろくて。ちょうどその時期に実験音楽や環境音楽みたいなものに以前にも増して興味をもつようになってて。で、そういう、ジャズやクラシックやオペラを聴いたときに感じたり考えたりしたことを含めた自分の環境全体を作品化したい、と思ったんです」。

 およそ3年ぶりとなるカヒミ・カリィのオリジナル・アルバム『Trapeziste』。フランス語で〈空中ブランコ乗り〉を意味するタイトルが掲げられた今作は、「空中ブランコのもつ緊張感から感じる瞬間性だったり、サーカスという時代性のないとこから、時代に関係なく人間は人間であるっていうようなこととか。そういうものを即興性のある音楽で表現してみたかった」という彼女の思いが具体化された実験性の高い作品になっている。「〈ジャズを聴いてたからジャズをやりたい〉じゃなくて、昔のスタンダードなジャズとかをProToolsとか、そういう新しいもののなかに入れて作り直すっていうことがやりたかった」という今作は、各曲毎に異なるプロデューサーを立ててきたこれまでの制作スタイルとは違い、今作とほぼ同じコンセプトで制作されたカヴァー・アルバム『My Suitor』でも彼女と抜群のコンビネーションを発揮していた神田朋樹、デートコースペンタゴンロイヤルガーデンなどで知られる高井康生、そしてカヒミ自身の3人を中心に制作された。もちろん、「作り終わってからはなんとなくカヒミ・カリィをやってきて節目になるような作品になった」と彼女自身も実感している今作のなかにも、その歌声などから放たれるあのカヒミ独自のポップ感はしっかりと健在。

「今回は、1曲1曲の音自体は全然ポップじゃなくてもいいと思ってた。でもアルバム自体は入りやすくて、でも入ってみたら〈あれ?〉って思うけど最後まで聴けてしまうもの、今までこういう感じの実験的な音に興味がなかった人が興味をもつようなきっかけになる作品にしたかったんです。そういう意味では、最初から〈ポップ〉といったものはどこかで意識してたかもしれないですけどね」。

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掲載: 2003年02月27日 15:00

更新: 2003年02月27日 17:29

ソース: 『bounce』 240号(2003/2/25)

文/早川 加奈子