インタビュー

TUCKER

TUCKER IS COMING! エレクトーンとリズムボックスの司祭があなたの街を席巻する!!


 午前1時、代官山。アマランスラウンジで艶めかしいヴェルヴェットの壁に包まれる。ドラァグ・クィーンたちは右に左に愛嬌を振りまく。手元にはペルノー・オレンジ、まだまだ酔い惚けるには程遠い。俺は鍵盤の司祭を観に来たのだ。リズムボックスの音色に侵されに来たのだ。

 彼、TUCKERはDJブースに現れる。即座に、3.5割引のDMCみたいなスクラッチ、〈エッエッ、エレクトーンの素晴らしいソロをお楽しみください〉で出し物が始まる……。

「たまたまエレクトーンなんですけど。家にあって、親は“さざんかの宿”とか弾いてたんです。もちろんぜんぜん眼中になかった(笑)」。

 彼はもともとスラッシュ~ハードコアに浸かっていたのだが、90年代初めのある日、モンド音楽と同時に自宅のエレクトーンを〈発見〉したのだ。

「僕のなかのマスターにハモンド奏者のドン・ルイスって人がいるんですけど、〈どうしてここまで!?〉っていうくらい燃えまくって演奏してる。リズムボックスもただボタンを押してくだけなんだけど、加速して、最後絶頂を迎える、みたいな(笑)」。

 TUCKERのエレクトーン(愛器はYAMAHA C-301)を聴いているとディズニーの映画「ファンタジア」さながら、鍵盤が踊り出してくるように感じられる(いかにも陳腐な比喩で、自分が腹立たしいけれど)。でも! その踊る鍵盤がモッシュしたりダイヴしたりするってのはどうよ!? 聴衆は圧倒され、しかし笑い転げる。彼のパフォーマンスはたぶん、なんかあのケチャップの踊り(!?)、あれを踊るのの100倍くらい、楽しい。まずは、アルバム『TUCKER IS COMING』を聴くことだ。「薄らオシャレなカルチャーとは一線を置きたい」とタッカーはのたまうがしかーし! 俺は、表参道を歩いてる女子ひとりひとりにこのアルバムの良さを説いてまわりたい。ドン・ルイスに敬意を表した“SUNNY”、秀逸なアレンジの“ROCK THE CASBAH”(クラッシュ!)……。ストーブがすっとぶさ!

 代官山の夜。俺がその後ビールを咽にたっぷり流し込んだのはいうまでもない。TUCKERはとびきりだ。

▼TUCKERをさらに知るための2枚を紹介。

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掲載: 2003年03月13日 12:00

更新: 2003年03月13日 19:01

ソース: 『bounce』 240号(2003/2/25)

文/村松 タカヒロ