Fantastic Plastic Machine
多彩なゲストを迎えて制作されたFPMの最新アルバム『too』に秘められたその意味とは!?
アース・ウィンド&ファイア、シック、ジェイムズ・ブラウンなど、さまざまなリミックス・ワークをこなし、またDJとしても日本はもとより、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ、そしてロシアとワールドワイドに活動の幅を広げるファンタスティック・プラスチック・マシーン(以下FPM)こと田中知之。彼の2年ぶりのニュー・アルバム『too』が完成した。今回は先行シングル“Why Not?”で見せたクリック・ハウス・ミーツ・フレンチ・ハウス的な線で来るのかな?と思いきや、それだけではない。毎度変化し続けるFPMだけに、これまでの彼のキャリアを感じさせながらもさらに一歩踏み込んだFPMワールドを展開している。
「2003年には2003年のオレの嗜好があって、それが素直に出て然るべきだと思う。マーケティング的に、〈次はこれが流行るからやろう〉っていうんじゃ決してないから。FPMとしてのすべての活動から生まれる、いろんな自覚を満足いくとこまで持っていって曲にする。それって大変だけど、それを全部クリアするのを楽しむっていうかさ、そんな感じで作ったんです」。
もともとホームリスニング/ダンス・ミュージックの融合といった側面から注目を集めたFPM。彼の音楽追求魂はそこだけに留まらず、前作『beautiful.』では、ディープ・ハウス的な展開までも披露した。そして新作での基本ラインはやはりハウスのようだ。
「前作もハウスになったっていわれたけど、生粋のハウス・クリエイターから見たらラウンジーなものに聞こえると思う。でもハウスだけに固執して、突き詰めていこうとは思わないんだよね。FPMにはジャンルの括りから離れた、OLからクラバーまで納得させるようなものを求められてる気がしてるんです。家ではCDで心地良く聴けて、かと思えばクラブではバスドラムがガンガン響くもの、それって考えたら無理な話だけど、そこを何とかしたい。自分に勝負挑んでるような感じ(笑)」。
今回はいままで以上にヴォーカル・トラックが多い。フィーチャリング・アーティストには、コラリー・クレモン、高宮マキ、山本領平などが名を列ねている。さらにはm-floのVERBALのラップ・ナンバーまで入ってるヴァラエティーっぷり。ポップスとしての間口もますます広まった。さて、タイトルになっている『too』は、〈too much〉とか、〈過剰な部分〉を表す意味の単語。その言葉こそ、まさに今回のアルバム全体を通した精神性なのだ。
「愛と性と哲学がテーマにあって。それってすべて、とてつもないファンタジーな気がするのね。たとえば、愛が美しくなり過ぎて、憎しみやいろんな感情からとんでもない結果が生まれたり。でも過剰さを追求していくとロマンティシズムにもなり得るってことにも気づいて。例えば、変態をめざしたはずの歌詞が最終的に非常にシンプルなラヴソングになってたり。表裏一体というか、グルッと回ると繋がってるんだよね。“Reaching for the Stars”の歌詞もラヴソングで、2人の関係は宇宙までも届きそうなんだけど、端から見るとそんなの小さいことじゃない? 誰もが体験する可能性があるおとぎ話、とも言える。でも逆を言えば世界はその集合体でしかない。ジョンとヨーコじゃないけど、世界平和を訴えるのもいいけど、まず目の前の人を愛せよ(笑)、と。そう考えるとFPMの過剰なサーヴィス精神も、過剰な愛と同じなんじゃないかなって。でも八方美人になってしまっては、抜けのある音楽は作れなくて。結局みんなの欲望を極めていくと……オレの好きなことをやればいいんだってことにもたどり着いて(笑)。それを最終的にみんなに共感してもらえると最高だよね」。