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インタビュー

MINMI


 冒頭からこんなことを書くのも失礼な話だけど、MINMIのメジャー・デビュー・シングル“The Perfect Vision”の特大ヒットに〈MINMIって誰?〉って思った人も少なくないはず。で、彼女が誰かといえば、かねてから大阪のレゲエ・シーンのなかでは知られた存在で、MIGHTY JAM ROCKをはじめとしたイカつい連中のなかで存在感のある歌声を聴かせてきたシンガー――でも、それは彼女が誰であるかを説明するのには十分じゃない。90年代中盤、彼女の音楽活動はこんなところからスタートした。

「ジャズ・バンドをしてる大人たちのなかでスタンダードを遊びで歌ってたんです。そのころクラブ遊びと全然別のところで、ジャズ・ヴォーカルに興味があったんですよ、エラ・フィッツジェラルドとか。そのときはスキャットにヤラれてて」。

 しかし彼女はそうやってジャズ・クラブに出入りしながらも、次第に歌う場所をクラブに移行させていく。だけど、クラブといってもそれはレゲエであったりヒップホップであったりと、本人いわく「ちょっと二股をかけてるような感じ(笑)」でふたつのシーンを行き来していたという。ということで、どちらが〈ホーム〉か、当時も、そして現在も意識してはいないようだ。

「それについはこれまでもずっと悩まされ続けていて、いまも解消してないんですよ。そういうときに私はただの歌うたいで、ただの音楽好きでっていうところに原点を置いてるんです。私はジャマイカ人じゃないし、アメリカ人じゃないし、オリジナルのレゲエなりヒップホップをそのままやることはできないから。音楽的にはフリーなところにいようと思ってて」。

 彼女はフェイヴァリット・アーティストとしてケイプルトン、ウェイン・マーシャルといったレゲエ・アーティストだけでなく、フェイス・エヴァンス、テディ・ライリー、メアリーJ・ブライジといったR&Bのアーティストの名前も挙げている。だが、〈MINMI〉というシンガーをフィルターとして見てみるとそのラインナップが実に自然に見えてくるのだ。

「音楽のジャンルっていう意味では全部フラットに受け入れてるんだけど、レゲエだけ、文化とか人との繋がりでいろいろと成長してきた部分があるから、そこに対する思い入れは深いんですよ。だから、レゲエの文化を広めようとしていることに自分も参加しているっていう感覚があって。ほかのものはそういう部分ではなくて好きな音楽だから聴いてるし、歌ってる。レゲエだけ音楽の部分以外での特別なものがあるんですよ。そこは大切にしていきたい」。

 そして届けられたファースト・アルバム、それが『Miracle』だ。TAKAFINやJUNIORといったこれまでの仲間たちに加え、今井了介、BL、Shingo.S、DOBERMAN INCのMCであるTMG、4WD、そしてジャマイカからはレンキーやスティーリー&クリーヴィーなどさまざまなメンバーを迎えて制作されたこの作品は、彼女が持ついくつもの色彩が鮮やかに光り輝いている。だが、〈多彩〉というよりもさまざまなエッセンスがMINMIのカラーに染め上げられていて、だからこそ彼女の個性がダイレクトに伝わってくる。そして、どの曲からも艶やかな情感がこぼれ落ちてきて、聴いているうちに胸を締め付けられたりワクワクしてきたりするのだ。ここにあるのは、ただ感情を揺さぶる強い歌。一言で言ってしまえばそういうことだ。

「聴いてくれる人に楽しさや喜びを与えられるっていうことがいちばん楽しくてやってるんです。歌いながら聴いてくれてる人の顔が身近にあるというか。でも、勇気を与えたいと思ったら私が勇気を持ってないといけないし、楽しさを伝えようとするときに私が楽しいっていう気持ちを知らなくちゃいけないし、悲しいっていう気持ちを知らなかったら優しさを伝えられないし。人間臭い部分が重要ですね、やっぱり」。

 まだ〈MINMIって誰?〉と思っているアナタ、まずはこの〈奇跡〉のようなアルバムに耳を傾けてはどうでしょう。このアルバムのなかでMINMIは全部教えてくれるよ、彼女が誰かっていうことを。

PROFILE

MINMI
95年ごろからクラブで歌いはじめ、オープンマイクのパーティーに参加したことをきっかけとしてレゲエ・シンガーとしての活動をスタートさせる。大阪のダンスホール・レゲエ・クルー、TERMINATORに参加するかたわら、ヒップホップのイヴェントにも参加。また、コンピ『SKY IS THE LIMIT Vol.1』を皮切りに、MIGHTY JAM ROCK『3 THE HARDWAY』、BOOGIE MAN『MUSIC DEALER』など数々の作品に参加して注目を集める。2002年8月のメジャー・ファースト・シングル“The Perfect Vision”、続いて発表されたシングル“T.T.T.”が相次いでヒットを記録。そして、このたび待望のファースト・アルバム『Miracle』(ビクター)がリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年03月27日 12:00

更新: 2003年03月27日 15:42

ソース: 『bounce』 241号(2003/3/25)

文/大石 ハジメ

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