インタビュー

copa salvo


「もともとはコバ(小林博憲)と出会って、アコースティック楽器を使ったオシャレ・ユニットをやろうと思ったんですよ。集まったメンバーの音楽的ルーツもバラバラだったんですけど、〈copa salvoやろう!〉ってことになってからみんなそれぞれ生楽器を買って」(小西英理)。

「そういう楽器でできるのって南国の音楽が多かったんで、爽やかに〈まずボサノヴァをやってみよう〉って、誰もボサノヴァ知らなかったのにやってたという(笑)。レゲエをやるとしても、〈レゲエの心はこうだ!〉とかテクニカルなことじゃなくて心については言うんですよ(笑)。その結果がこのcopa salvoのサウンドになってる」(小林博憲)。

 そんなふうに始まったcopa salvoだが、「ライヴをやっていくうちに自然と爽やか系からアフロな土臭い系のほうが気持ちいいなって思うようになった」(英理)、「〈アフロ性〉っていうのも、もっと人間の衝動的部分を出すというか。音を緻密に作り込んでいくというよりも、この6人でライヴでドンッて出す、という。オレら〈人柄の音楽〉だと思うんですよ」(小林)というように、彼らはサウンド至上主義ではなく、何よりもそのサウンドを出している生身の人間が第一。コパ・サウンド最大の特徴と魅力はここにあるようだ。

 そんな彼らが新作『CUPA』をレコーディングしたのは、〈ブエナ・ビスタ〉やリリースされたばかりのライ・クーダー&マヌエル・ガルバンの新作と同じ、キューバのエグレム・スタジオだった。

「たまたまライヴの入ってない月があって、そのときレーベルの親分が〈キューバ行きたいな〉って言ってて、みんなも〈行きたい!〉ってそんなノリだけで(笑)」(英理)。

「技術がどう……って国なんですけど(笑)、でもリズム・パターンとか世界一複雑なことをやってるんだけど、みんなそれをあたりまえのように楽しそうに笑いながらやってるっていうね」(小林)。

「向こうに行ってから、〈アフロ・キューバン・オールスターズやシエラ・マエストラの人や〉って聞いてウワッて驚いたんだけど、実際会ってみたらみんな気さくな人たちで。でも、生でそのリズム感や巧さを目の当たりにして最初はアセってしまってたんですよ。一週間ほどして仲良くなったら、〈マインドは変わらないわ〉って楽しくなってきたんですけど」(英理)。

 普段からライヴをいっしょにやっているオーサカ=モノレールのホーン隊も連れていくはずが、スケジュールの都合上キャンセルに。ということで、現地のホーン隊を入れることになった今回のレコーディングにはいろいろな刺激を受けたようだ。でももちろんcopa salvoは、ただキューバに行ってキューバ音楽をレコーディングしようと思ったわけではない。

「彼らは、音自体もデカいし、ペットも聴いたこともないような高音出してたりして〈おい、どこまで行くんや〉って感じで(笑)。私は楽曲のイメージがあったから、〈出せばいいってもんちゃうねん〉って、もっとワビサビを出してもらいたいってリクエストしたりして」(英理)。

 結果、パキッパキでスウィート&ストロングなキューバのホーン隊と、さまざまな南の音の要素を楽しみつつほんのりとワビサビ感が漂うコパ・サウンドの融合という、掛け算的好結果を生むこととなった。

「南の音楽に惹かれるのは、その心意気でしょうかね。楽しそうだから自分たちでもやりたくなる。で、〈まだまだこんな音があるんだ!〉って知るともっと楽しみたいと思う。自分の知らないところで楽しいことがあるんだとすると口惜しいじゃないですか」(小林)。

「キューバに行ってわかったんですが、その場の雰囲気とかテンションで楽器を持ち替えたり曲の構成が変わったりするという……そんな生身の人間を感じられる音楽が好きなんですよ」(英理)。

 copa salvoの楽しくも熱い音の旅はまだまだ続きそうだ。その旅に同行していっしょに楽しめることほどハッピーなことはなかなかないんじゃないかな。

PROFILE

copa salvo
小林博憲(ベース)、小西英理(ピアノ/ピアニカ)、増田忠祥(ヴォーカル/ギター)、佐藤陽(パーカッション)という編成で2000年4月に結成される。その後、PYON中島(パーカッション)、ピーチ岩崎(ドラムス/パーカッション)が加入し、現在の編成となる。2001年に“mindful”“wave”という2枚の12インチ・シングルを、2002年1月にはファースト・アルバム『copa salvo』を、さらに同年10月にはセカンド・アルバム『fanfare for the eternal caravan』をリリース。ラテン、ボサノヴァ、アフリカン、レゲエなどを吸収したサウンドは、カフェやクラブでの精力的なライヴ活動で注目を集めていく。このたびニュー・アルバム『CUPA』(plants/RD)がリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年03月27日 12:00

更新: 2003年03月27日 15:48

ソース: 『bounce』 241号(2003/3/25)

文/ダイサク・ジョビン