インタビュー

Wayne Wonder

レゲエ・シーンを生き抜いてきたシンガーがついに本格的にブレイク!! この新作、泣けます!


 ショーン・ポールに続いて、レゲエ・シーンからアメリカに斬り込んで成功を収めつつあるのがウェイン・ワンダーだ。といっても、10年以上のキャリアを誇るラヴソング専門シンガーは飄々としたものなのだが。大流行した〈Diwali〉リディムにもうひとヒネリ加えた“No Letting Go”がラジオで人気を博し、彼の知名度をネクスト・レヴェルに持ち上げた。そんな彼にここまでのキャリアをみずから振り返ってもらった。

「90年代初頭のジャマイカでは、アメリカのヒット・ソングのカヴァーが主流だった。もちろん、有名になるために最初は俺もカヴァー・ソングを歌っていたけど、やっぱり限界があるよね。世界中をツアーしていたし。R・ケリーやアン・ヴォーグの曲を歌い続けるわけにはいかないって痛感したんだ」。

 ということで、94年以降、彼は基本的にオリジナル曲を歌い続けている。「自分だけの歌を歌う楽しさを知った時期は、100万ドルを積まれてもカヴァーは歌いたくないって気分だった」とは当時を振り返ってのコメント。

 最新作『No Holding Back』では全曲作詞に関わり、4曲を自身でプロデュースしている。「デビューが早かったから、アーティストとして成長する合間に音楽作りを覚えたんだ」と語る彼は、ジャマイカ人にしては珍しく物静かなタイプでもある。

「いるかいないかわからないくらい大人しいから、逆に長生きできたんだと思う。あまり喋らずに周りを観察して、物事を吸収するタイプなんだ。そのおかげで新人に慕われることも多いね。ブジュ・バントンやベイビー・シャムも最初は俺に相談してきたから。俺が彼らをスタジオに連れて行ったんだ」。

 〈サプライズ〉という名前でDJもこなす器用な面もある彼の最新作は「オーセンティックに仕上げたかった」という理由から、ゲストはエレファント・マンと舎弟のみ。「アメリカのアーティストと組むと、たいがい相手の音楽をやらないといけないのがイヤだった」ときっぱり。

「流行のトラックを使うにしても音楽的な解釈を加えて仕立て直すから、単純なダンスホール・レゲエよりは音楽的に広がりがあるけれど、レゲエに変わりない。俺はカリビアンとして、ルーツに則ったいい音楽を作りたいと思ってる」。

 この言葉どおり、構成はシンプルながら厚みのある音で彩られた曲が新作には詰まっている。物静かなトレンド・セッター、ウェインが示した方向に、レゲエの次の展開があるような気がしてならない。まずは、自分の耳で確かめてほしい。
▼ウェイン・ワンダーの作品を紹介。

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掲載: 2003年04月17日 15:00

更新: 2003年04月17日 16:30

ソース: 『bounce』 241号(2003/3/25)

文/Minako Ikeshiro