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インタビュー

HY


 2001年にリリースされたファースト・アルバム『Departure』のヒットによって、一躍、沖縄インディー・シーンのトップへと駆け上がったHY(エイチワイ)。当時、メンバーは全員高校生。「自分たちの音が形になる自体、超感激だったし、ただもうガムシャラに演るしかなかった」(Shun)と振り返るが、男女2人によるヴォーカルとアグレッシヴなラップの競演、パンクもロックもヒップホップも越えたところで鳴らされているタフでメロディアスなサウンドは、確実にリスナーの心へシュート。沖縄限定リリースだったにも関わらず、噂は一気に本土へと飛び火し、2002年には全国リリース、全国ツアー……と瞬く間に知名度を上げていった。

「ビビったよね、とにかく(笑)」(Shun)。

「最初は遊びで始まって、たまたまオリジナルを作ってみようっていうんでやってったのが、いつのまにかCDになって、今度は全国リリース。なんか(その事実を)信じられないままCDだけが一人歩きしてるような感じで、正直、いまでもあんまり実感湧かないんスよね」(Hide)。

 放課後の延長で始めたバンド。なんとなくみんなが集まり、なんとなく音を出し始めたら、こうなった。とくに〈○○みたいな感じ〉といったこだわりは一切なく、「誰かひとりが演り始めると、みんながそれにくっついていく」(Shun)――いわば、ジャム・セッションみたいな感じだったという。

「多分、5人が聴いている音楽の幅が広すぎて、ひとつに統一できないんだと思うんですよ。普通、3ピースのバンドだったら3ピースの色、明るい音楽やってるんだったら明るい色……っていうふうに、なにかひとつの色でまとまると思うんですけど、自分たちの場合、どうしても色が混ざっちゃうっていうか、どれもこれもいろんな色が出たがってる(笑)。それで〈じゃあ、わかった。それをひとつずつ出していこう!〉みたいな感じでやったらこうなった。でも、それがいまでは逆に〈HYらしさ〉なんじゃないかなと、自分では思ったりするんですけど」(Shun)。

 そんな〈らしさ〉をより細かく分解、突き詰めていったのが、このたびリリースされたセカンド・アルバム『Street Story』。

「ファースト・アルバムを出したころも、自分たちなりにすごく輝いてたとは思うんですよ。でも、あれから学校も卒業して、もっと真剣に音楽と向き合うようになった。それで〈よりHYらしいものを〉と考えたら……」(Shun)。

「より〈音〉を深く追求していくことだったんですね。それで今回、コーラスはもちろん、ヴァイオリン、ストリングス、ラッパ……ほかにもいろいろな楽器にチャレンジして。Izuのヴァージョン・アップしたキーボードの音色とか、Yuheiのシブいギターとか、いろんなところに聴きどころがある」(Hide)。

 なかでもラストのタイトル・ナンバー。これまで、曲のタイトルや歌詞に〈風景としての沖縄〉が描かれることはあっても、ここまで直接的な〈サウンド〉として沖縄がフィーチャーされたことはなかったのでは?

「自分たちにしてみれば三線とかは近所から毎日のように聴こえてくるし、ぜんぜん珍しいことではないんですよね。まぁ、これまではたまたま入れてなかっただけで、今回、入れてみたら〈あ、いい感じかも〉って。でも、そういうふうに自分たちが意識してないところを〈沖縄的〉って言ってもらえるのはすごく嬉しい」(Shun)。

 しかし、それでも沖縄在住で活動を続ける彼らならではの日常感――とりわけ、出身地である東屋慶名(ひがしやけな)の〈なにもない〉という贅沢さ――は、彼らがそれを意識しようがしまいが、そのサウンド以上にバンドの持つ生活リズムとしてのオリジナリティー、HYらしさを体現していると思うのだが。

「あー、それはあるかもしれないですね。だって最高だから! 東屋慶名(笑)。見渡す限りの空と海……それに、時の流れもぜんぜん違うし、できればずっと離れたくない。まぁ、これからもできる限り、ここで自分たちの音楽を作って発信していくことが続けられればなぁと思います」(Shun)。

 沖縄で生まれる音楽にあらためて注目が集まるようになって数年。琉球音階のようにシンボライズされたものが〈沖縄らしさ〉だと思ってきたわれわれに、彼らはその音と世界観でもって、新しい〈らしさ〉を定義してくれているのかもしれない。

PROFILE

HY
沖縄出身。高校の同級生であったHide(ヴォーカル)、Izu(ヴォーカル/キーボード)、Shinsuke(ベース)、Yuhei(ギター)、Shun(ドラムス)の5人で結成。地元のストリートを中心にライヴ活動を開始し、親しみやすいメロディーと個性的なヴォーカル/ラップで注目を集めていく。2001年9月にファースト・アルバム『Departure』をリリース。当初、沖縄限定のリリースであったにも関わらず2か月あまりで1万枚を越えるセールスを記録し、2002年4月には同作品が全国リリースされる。その後の全国ツアーや夏のイヴェントにおける熱演でさらにバンドへの注目が高まるなか、待望のセカンド・アルバム『Street Story』(climax entertainment)がリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年05月01日 15:00

更新: 2003年05月01日 18:48

ソース: 『bounce』 242号(2003/4/25)

文/なかしまさおり