インタビュー

migu

数多のセッションを経て、音楽的滋養をたっぷりと蓄えたあらきゆうこのソロ・ユニット始動!


 ドラマーのソロ作品と言えば、ドン・ヘンリーやフィル・コリンズのポップス作やバーナード・パーディーの各種インストなど、さまざまなアルバムが思い浮かぶが、smorgasの元ドラマーにして、コーネリアスやくるりなど、技術と鋭敏なセンスが要求されるであろうセッション仕事を数々こなすmiguことあらきゆうこの作品はどんな内容であるのか、事前に想像することができなかった。それは……。

「ルーツですか……そうですねぇ。チボ・マットが好きとか、そういうことは言えますけど、これといってないんですよね」という彼女の天然な資質が参加作品に見え隠れしていたからだ。もちろん、そこは数々のセッションをこなす売れっ子ドラマーらしく、確かな技術に加え、驚異的な判断力としなやかな適応能力を兼ね備えているわけだが、後者の感覚を駆使して気ままに作られたのが、本作『migu』である。

「ソロはいつか作りたいなと思ってはいたんですけど……コーネリアスのワールド・ツアー先で〈出そう出そう!〉って言ってくれる人がいて。それだったら、っていう話になったんです。レコーディング自体はゆっくりと時間をかけて、なにか思いついたらスタジオで録るっていうことを繰り返しましたね」。

 夫でギタリストの清水ひろたか(本作のプロデューサー)が自宅スタジオを所有しているため、小山田圭吾や名越ゆきおら、気の合う仲間が参加した本作は、彼女のヴォーカルを含め、ギターほかさまざまな楽器で遊んでいるうちに生まれたという私的な記録――日記に近いものだ。

「日記? ああ、そうかもしれないですね。“spider”は家に蜘蛛が出て怖かったっていう曲だし、“What to do?”は家の近所にあったお気に入りの漫画喫茶が閉店になって、どうしようっていう曲だし(笑)」。

 ともすれば、migu流のエレクトロニカ作品?ともとれる本作だが、音の心地良さを優先させた清水のプロデューシングが彼女の遊び心と空間的な詩情を浮き彫りにする。

「ドラマーなのにドラムを叩いてる曲が少ないことに気付いて、あわてて最初と最後にドラム・ソロを足したんです。これなら、ドラマーらしいアルバムに聴こえるかな?(笑)」。
 あらきゆうこの秘密、ここに見たり!

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掲載: 2003年05月01日 16:00

更新: 2003年05月01日 18:43

ソース: 『bounce』 242号(2003/4/25)

文/小野田 雄