インタビュー

Audio Bullys



「最悪!! もう勘弁してほしいと思っている。だいたいさ、あの表現は俺たちが言い出したことじゃないんだぜ。凄くネガティヴな響きがあると思う」。

 そういきり立つのは、いまロンドンを中心にUKのプレスを大いに賑わせているユニット、オーディオ・ブリーズの片割れ、トム・ディンズデイルだ。ストリーツやベースメント・ジャックスを引き合いに出されるほどに期待と注目を集める彼らのサウンドは〈フーリガン・ハウス〉と呼ばれているのだが、ご立腹の原因はそれらしい。

「実は俺たち、以前UKのある音楽誌のためにフリーCDのDJミックスを手掛けたことがあるんだ。それがどういう名前になるのかを、後でチェックしなかった俺たちにも半分は責任があるんだけど……とにかく雑誌が売り出された時にはもう手遅れで、そこら中に〈フーリガン・ハウス〉とプリントされていた。〈何だよ、それ!?〉って感じだったけど、もうどうすることもできなかったのさ。事前に知っていたら絶対に許さなかったけど」。

 UKのストリートから生まれてきた音楽……パンクであり、ガラージであり、その他諸々すべてをぶちこんだような荒削りな姿(あながち〈フーリガン・ハウス〉という呼び名も的外れではないかな?)が魅力的な彼ら。まだ20歳そこそこで80年代のパンク、ニューウェイヴ、またキンクスやビートルズにも強い影響を受けたらしいが、「そんなことが俺たちの公式バイオに書いてあったっけな(笑)」と、どうもメディアに出ている情報にはかなり偏りがあるようだ。

「別にそんな音楽ばかり聴いていたわけじゃないからさ。惑わされないでくれよ。いま名前が挙がったような音楽も聴いていたけど、それだけじゃないんだ。もっと広い範囲のものをいろいろ聴いて育った。だから誤解しないでほしい。何だかひとつのイメージがついてしまいそうでイヤなんだ。ああ、あのバイオ! すぐに何とかしなきゃって思っているよ(笑)」。

 そう、今回のアルバム『Ego War』には「言葉で正確に説明するのは非常に難しいタイプの音楽」とトムが話すとおり、彼らがいかに多様な音楽を吸収してきたかを雄弁に物語る楽曲が揃っている。どの曲も狭い枠に収められることを避けるようにさまざまな要素を同居させているのだが、それは意図的なものではないという。
「〈こういったタイプの音楽を作ろう〉とか、そういうことを事前に考えたことは一度もなかったな。その時その時に作った音楽が、たまたまそういうタイプのものだったというだけのことさ」。

 そのように正直かつ自然体で作られた曲のなかに、チャートでの成功をもたらし、彼らを一躍スターダムに押し上げたシングル“We Don't Care”がある。

「作っている時に、〈こりゃ凄い曲が出来上がったぞ〉と感じていた。自信作だったんだ。凄くわかりやすくて、一般受けするだろうなと思っていた。だから実際にそうなった時も〈信じられない!〉みたいな驚きはなかったな。凄く嬉しかったのは確かだけど、ただ俺たちはチャートを狙っているわけでは決してないからね」。

 一方で、日本をはじめとする本国UK以外で自分たちの音楽が聴かれていることに対しては「ひとこと、もう最高さ! どう聴いたってバリバリにブリティッシュな音楽が、UKだけじゃなく世界中の人々に受け入れられるなんて凄いことだと思う」と喜びを隠さないトム。最後にトムからオーディオ・ブリーズをまだ未体験の人に向けてもうひとこと。

「いろんなタイプの音楽が収録されているから、どんな人でも気に入る曲を1曲は発見できると思っている。気に入ったらアルバムを家にお持ち帰りしてくれよ。逆にピンと来なかったら……それはそれで、まあ仕方がないな(笑)」。

PROFILE

オーディオ・ブリーズ
ロンドン出身のサイモン・フランクス(ヴォーカル/ソングライティング)とトム・ディンズデイル(DJ)による2人組。幼い頃から楽器演奏に習熟する一方でレイヴに通っていたサイモンと、17歳の時からクラブ・プレイを始めていたトムが出会い、2000年頃に結成。2002年7月に『Audio Bullys EP』でデビューし、ハウスやUKガラージ、ヒップホップ、ダブ、ドラムンベースなどの要素を融合させた音楽性が、〈フーリガン・ハウス〉と呼ばれて話題になる。続いて、2003年1月にリリースしたシングル“We Don't Care”がナショナル・チャートで15位に入るヒットを記録。そして、5月14日にファースト・アルバム『Ego War』(Source/Virgin/東芝EMI)がリリースされる予定。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年05月08日 12:00

更新: 2003年05月08日 17:09

ソース: 『bounce』 242号(2003/4/25)

文/青木 正之