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インタビュー

cacoy

dj klock+tenniscoats=? 異色の組み合わせによる美しき傑作が到着!!

 いまや新たなる東京の〈顔〉になりつつあるDJ/トラックメイカーのdj klock、tenniscoatsのメンバーとしても活動するueno(ギター/サックス)とsaya(キーボード/ヴォーカル)の3人からなるcacoyが結成されたのは3年前のこと(ちなみにuenoとsayaはklockの大学の先輩とのことで付き合いそのものはかなり古い)。彼らから届けられたのが記念すべきデビュー・アルバム『human is music』だ。「断続的にちょっとずつ作って……2年半ぐらいですかね。録音は全部ウチでやって。11時ぐらいにサックス吹いたりしてた(笑)」というklockの言葉どおり、このアルバムはすべてメンバーの自宅で制作された。

「そういうやり方で制作するとノイズが出てきたりもするんですけど、それを逆に切り張りしてパーツを作ったりしてる。僕らにとっては既存の価値観を変えることが重要で、そういうやり方でも超えられるんですよね」(dj klock)。

 結果この作品は、ロバート・ワイアットをも思わせるメランコリアが小さなマンションの一室でも作り出せることを見事に証明していて、それは奇跡というしかないほどだ。そういえば昨年発表されたklockのアルバム・タイトルは『human essence』。……ところで〈human〉とは? 

「この間みんなで喋ってて、〈ひとりだったら絶対に音楽なんかやらないよね〉って。誰かがいるから絶対にやるわけだから」(saya)。

「僕も加藤(klock)だからいっしょにやるんですよ。たまたま彼はラップトップだったけど、フルート一本持って〈いっしょにやりましょう〉って言われても多分やってたんです。加藤といっしょにやることに興味があったから」(ueno)。

「僕もそれは思った。だから〈human is music〉なわけで、音楽がその人そのものなんですよ」(dj klock)。

 つまり『human is music』とは人と人との関係性のなかでしか生まれてこないもの、それこそが〈music〉であると表しているのだろう。sayaが「音質とか音階にこだわるのはやめたんです。それがすべてじゃないから」と言うように、このアルバムは音から聞こえてくるもの以外の部分が伝わってくる。で、それがなにかというときっとさまざまな意味を内包した〈human〉ということではないだろうか。だからこそこの作品は聴くものの心のヒダに触れるようなダイレクトな魅力を持っているのだ。〈ホーリー〉とすら表現したくなるようなcacoyのサウンドは〈ピュア〉としか呼ぶことができない美しさを兼ね備えている。だけどそれだけじゃない。まずはご一聴を。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年05月15日 13:00

更新: 2003年05月15日 18:51

ソース: 『bounce』 242号(2003/4/25)

文/大石 ハジメ

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