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インタビュー

BONE CRUSHER


アテンション! またもアトランタ発の新星だ。骨まで噛み砕く食いしん坊万歳(偏見)、ラップも体格も超ヘヴィーなボーン・クラッシャー! もう一度。ラップも体格も超ヘヴィーなボーン・クラッシャー!! とまあそれぐらい超重量級のガナリ系ラッパーなのだ。これからは愛を込めてボンクラと呼ぼう。……さて、このボンクラを送り出したのは、同じアトランタを拠点とするジャーメイン・デュプリ。このたびアリスタ傘下に移った彼のレーベル=ソー・ソー・デフのリスターターに選ばれたという事実だけで、デュプリの相当な期待も窺えようものだ。

ジャーメインにはオレのスター性が見えていたんだろうな。彼とは、以前ソー・ソー・デフのA&Rだったリル・ジョンの紹介で10年も前から知り合ってたんだよ」。

ただ、ボンクラはメジャー・デビュー以前から地元の有名人だった。今回のアルバム『Attenchun!』はすでに地元で大ヒットしたインディー作品の新装盤で、シングル“Never Scared”の異常人気に目を付けたデュプリが契約を決めたものなのだ。

「オレの時代が来たっていうか、絶好のタイミングで時代にあったものを出してバカ受けした……それだけのことじゃない?」。

そう話しつつも、実はフリースタイル巧者であるボンクラの確かな実力にデュプリが惚れ込んだのは間違いない。そもそも、そのワイルドなMCネームも、バトルMC時代の名残のようだ。

「みんなからそう呼ばれてて、勝手に定着したんだ。オレのアグレッシヴなラップ・スタイルにピッタリだろ? 昔はマイク一本で次から次へと相手をこっぱみじんにしてたからな!」。

84年にランDMCのショウを観て、ヒップホップの虜になったというボンクラは「最初はDJになろうとしたんだけど、周りにはオレより上手いヤツなんていくらでもいたのさ。でも、ラップでオレに敵うヤツはいなかったから……」という単純な理由でマイクを握るようになったらしい。もちろん80年代は周囲の状況もまだ整っておらず、「ヒップホップなんて一時の流行で、長続きするなんて誰も思ってなかった」そうだ。ただ、クリス・クロスやアウトキャストのブレイクをきっかけにアトランタ産ヒップホップが盛り上がるに従って、ボンクラにもスポットが当たるようになった。トミー・ボーイなどとの契約はいずれも実を結ばなかったものの、それでも90年代後半には、ジム・クロウやヤングブラッズらより新しい世代の作品でボーン・クラッシャーの名前は散見できるようになる。特に、TIやキラー・マイクといった期待株との交流は、ボンクラをさらに大きくした。

「みんな近所に住んでたんだ。3人ともラップをやってたし、自然に仲良くなったんだ。オレたちはストリートでいちばんホットな3人って呼ばれてたんだぜ!」。

そして、2人のデビューに続き、ボンクラもようやくチャンスをモノにしたわけだ。

「オレはもともとストリートで知られてたから、そういう要素を強調したアルバムをやろうと思ってた。ヒップホップはストリートを反映して、現実を直視する。オレは自分が見た情景そのものをライムしてるんだ。それがヒップホップの本音だし、そういう部分にみんな共感を覚えるんだと思うよ。あとは地元の仲間たちを集めて、作品をアトランタ~ダーティー・サウスで埋め尽くしたいと思ってたんだ」。

その言葉どおり、『Attenchun!』にはグッディ・モブ、リル・ジョン、キラー・マイク、TI、レディ・アイス、チャイナ・ホワイト、それにボンクラが率いるリリカル・ジャイアンツの仲間たち……と有名無名問わずATL印のアーティストが並ぶ。それにしても、何でアトランタはこんなに人材が豊富なんだろうか?

「食べ物が旨いから……いや、皆が持ってる〈ソウル〉の為せる業だと思う。生きていくために闘って前進していくヴァイブがあるんだ。アトランタは新鮮なエネルギーに満ち溢れていて、パーティーも毎晩あるし……とにかく刺激的な土地なんだよ」。

なるほどね。で、現在のパーティーの主役はもちろん、ラップも体格も超ヘヴィーな……。

PROFILE

ボーン・クラッシャー

アトランタのアダムスヴィル出身。85年頃よりラップを始め、フリースタイルのバトルを中心に活動する。96年にトゥー・ショート“Gettin' It”で初レコーディングを経験し、90年代後半になるとヤングブラッズやパスター・トロイらの楽曲に数多くフィーチャーされて注目を集めていく。その後、みずからのレーベル、ブレイク・エム・オフを設立して、2002年にファースト・アルバム『Bone Crusher And His Industry Friends』をリリース。そこからのシングル“Never Scared”が南部を中心に大ヒットを記録し、2003年にソー・ソー・デフと契約。このたびメジャー・デビュー・アルバム『Attenchun!』(So So Def/Arista/BMGファンハウス)がリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年05月29日 15:00

更新: 2003年05月29日 17:35

ソース: 『bounce』 243号(2003/5/25)

文/出嶌 孝次