インタビュー

Yeah Yeah Yeahs


モグワイのスチュワート・ブレイスウェイトは、気に入らないバンドに噛み付く狂犬としても知られるが、ヤー・ヤー・ヤーズにはベタ惚れだ。「あれは本物だ」と。そういえば、アルバム・デビュー前だったヤー・ヤー・ヤーズに注目してライヴの前座に抜擢したバンドは、ストロークスにホワイト・ストライプス、ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンなど、どれもこれも、我が道を行くことにかけては一癖あるバンドたちばかり。先ごろリリースされた日本編集盤『Yeah Yeah Yeahs』でもこのバンドのサウンドが持つ強烈に荒々しい疾走感と、歌詞が含む猥雑な本音主義は花開いていたが、それはあくまで〈初めはちょっとだけよ〉のチラリズム。ようやく完成したデビュー・アルバム『Fever To Tell』では、ガレージ・ロックとパンクを呑み込んだ、勢い一発の威勢の良さはもちろん、シンガー・ソングライター風味のメロディーの立った曲や、ポスト・ロック調の自由な展開を持つ曲など、このバンドが、どうして早くからその実力を見抜かれていたかが納得できる作品になった。

「〈Fever〉っていうと、まずはクランプスの曲を思い出すわ。あとは、セックス。それは否定のしようがないでしょ。それから……何があるかしら、差し迫った感じとか、夢中になってる感じとか、そういうイメージよね。で、なにかホットなもの。当然か(笑)」(カレンO:以下同)。

ホットなもの。確かにタイトルどおり、NYロック・シーンの今年いちばんの話題でもある彼らが放出している熱気は、驚くほどに自由だ。たとえばNYのアート・パンクや女性シンガーの系譜。今年のNYにおける新人の豊作。ヤー・ヤー・ヤーズは、そのすべてに当てはまり、でもそこに留まらない。それは、彼女たち3人があくまでも「ポップでありたい」という、キッパリした意志を持つからだ。

「あたしたちのフックとかリフって、耳に残るポップなものだと思うし、あたしはそこが気に入ってるの。今、周りにいるバンドと同じカテゴリーにあたしたちを入れようとしたら、けっこう難しいだろうって気はするわ。あたしたちは、ノイジーでもありたいけれどポップでもありたい。ノイジーとポップって、普通はうまく折り合わない要素だけど、そこにあたしたちなりのエモがあるっていうか。それがあたしたちのいちばんの特徴だと思うな」。

今回、ツアーの合間に話を聞かせてくれたカレンは、もともと映画を学ぶためにニューヨーク大学に通っていた知性派。そんな彼女が、時には股のところが破れた網タイツを履き、ポップでガーリーな露出度過剰の衣装をステージで身に着けると、強烈にクールだ。男性の愛玩物としてのエロティシズムではなく、女性の自由さをアピールしているかのような風貌は──当人はそのあたり無頓着なのだろうが──知性に裏付けられた強靭さを感じさせる。そう、デビュー当時のマドンナが持っていた、あの強靭さを。

「マドンナ、だぁ~い好き! “In To The Groove”とか、ああいうダンスっぽい曲をやってた初期のマドンナって、あたしにとってはベストなの。実は“Modern Romance”って曲は、マドンナの〈スーザンを探して〉っていう映画のスコアにインスパイアされたのよ。あたしたちだって、実際にはすごくマジメで繊細な人間なんだし、そういう面を覗かせる曲があるというのも新鮮味があっていいんじゃないかなって」。

知性派でありつつ同時にこの屈託のなさは、まぎれもなく天然。ゆえに、計算高くならずに、クレヴァーな衝動を撒き散らすことができるのかも。真贋を見抜く目を持ったクセの強いギター・バンドたちに彼女たちが愛される理由は、そういうところにあるのだろう。

PROFILE

ヤー・ヤー・ヤーズ

カレンO(ヴォーカル)、ニック・ジナー(ギター)、ブライアン・チェイス(ドラムス)によって2001年にNYのブルックリンにて結成される。同年5曲入りEP“Yeah Yeah Yeahs”でデビュー。ホワイト・ストライプスのフロントアクトとして初めてのステージを踏む。2002年には同シングルがUKでリリースされ、シングル・チャートのトップ30に食い込むヒットを記録。デヴィッド・ボウイがキュレイターとなって行われた〈Meltdown Festival〉に出演するなど、次第に人気を高めていく。同年9月にはセカンド・シングル“Machine”をリリース。このたび、待望のファースト・フル・アルバム『Fever To Tell』(Polydor/ユニバーサル)がリリースされたばかり。

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掲載: 2003年05月29日 15:00

更新: 2003年05月29日 17:35

ソース: 『bounce』 243号(2003/5/25)

文/妹沢 奈美