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インタビュー

Tica


ticaカラーに染め上げたカヴァー曲を中心に構成された、新作『latest rules』完成!!


「いままでは、とりあえずなんでもやってみなきゃ身につかないぞっていう感じで、毎回ノウハウを勉強しながらやっていた。つまり習作めいたところがあったと思う。で、そういうふうにひととおり作ってみて、武田(カオリ)もおれも、ticaでやるうえでの個性っていうか、トラックならトラック、歌なら歌の、〈だいたいキミ、こんな感じでしょう?〉っていうのが、ようやく見えてきたんですよね」(石井マサユキ、ギター/プログラミングほか)。

 昨年のアルバム『Phenomena』でのハウスへの接近を例に挙げるまでもなく、ticaというユニットは暗闇のなかを手探りで歩くことを楽しむかのように、作品ごとに新たな探求と実験を繰り返しながら前進してきた。その結果、表面的な曲調やアレンジがどれだけ変わろうとも決して揺るがないticaの〈らしさ〉を、ふたりはここに来ていよいよ確信するに至ったようだ。それは「向き不向きがわかってきたということ」(武田カオリ、ヴォーカル)でもあるという。

 そして、「現時点での方向性を確認し、リスタートを図るという意味で」(石井)制作されたのがカヴァーを中心に構成される『latest rules』。カヴァー・アルバム、と呼んでしまうと番外編的なイメージを与えがちだが、ビーチ・ボーイズ“Calorine No”、ニール・ヤング“Out On The Weekend”、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド“Pale Blue Eyes”といった往年の名曲が、まったくの別モノ――つまり、まぎれもないticaのオリジナル――として生まれ変わっている。ぬくもりと湿り気を同時に帯びた武田のヴォーカルと、音数を絞った端正なトラックは、「今回は考えすぎず、右脳のみ――つまり感覚で作りましたね」(武田)というとおり、これまでになくリラックスした雰囲気を伝えてくれる。

 「以前は、100点満点正解の音を出さなきゃって思っていたんですよ。だけどいまは、それこそどんな音でも全部正解なんだ!っていうくらいに感覚が開けてきた。何やっても大丈夫なんだよ、全部のコーナーをかっこよく曲がり切る必要はないんだよってね」(石井)。

 まるで開き直りのようにもとれる発言だが、それは揺るがない自信を得たことの裏返しでもあるはず。『latest rules』は、ticaのコアとなる部分を浮き彫りにすると同時に、次なるオリジナル・アルバムへの序曲として聴くことも可能な作品だ。

▼『latest rules』でticaがカヴァーした曲のオリジナルが収録されているアルバムを紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年05月29日 17:00

更新: 2003年05月29日 17:34

ソース: 『bounce』 243号(2003/5/25)

文/土佐 有明