イルリメ

オーライ!　イルリメの最新作はまたもやモユニジュモの口内放送が冴え渡る絶品の一枚×2だよ!!

　「いままでは（他の）人とやるっていう企画のもとにやってたんですけど、それは『Quex』でひととおりやったし、次は自分でやろうかなみたいな感じで。もともと一人で作ってたんで、元に戻っただけなんですよ」。

　ここ数年で大きく注目を集めた在阪レーベル／イヴェント＝SPOTLIGHTにて、その周辺アーティストをはじめとするさまざまな人々とのコラボレートを繰り返しつつ作品をリリースしてきたイルリメことモユニジュモ。ヴァージョン集『流星より愛をこめて』のリリースからそう時を置かずしてリリースされるアルバム『鴎インザハウス』は、トラック制作を含め100％セルフ・プロデュースで仕上げられた（ダブ・アルバムとセットになった）2枚組だ。他人の手を介すことなく自分の音楽へとアプローチしたその成果は、「ぎょうさんの機材にスイッチを入れて始めるんじゃなくて、サンプラーひとつ置いてやり始める」という制作環境の気安さとともに、よりモユニジュモの姿を、音楽に対する彼の〈無意識の意識〉を、生々しく映している。

「意図的にこういうことをしようと思ってやったことがない。ほとんど自分の快楽だけに沿って作ってるっていう感じですからね。そういう、自分が好きなもののなかに他人が好きな部分もあるのはわかってるし、それで引っ掛かってくれたらいいなって。〈他人〉って言っても、誰やねんって話じゃないですか（笑）。仮に対象がわかったとして、そういう曲を作れるかっていったらそんなことはないし」。

　そんな気安さにも関わらず、「グレードアップした」とモユニジュモ本人も語るアルバムとなった一因には、ILLICIT TSUBOIをミックスに招いたことだろう。モユニジュモはラップを楽器的に扱うミュージシャン体質が強いが、彼のパフォーマーとしての力強さが今作でこれまで以上に現れているのは、数多くのライヴで培われた結果であると同時に、TSUBOIのミックスが貸した力も大きい。「ラップの芯の部分が強調されてたり」といった成果はモユニジュモ自身も楽しめるものであったようだ。

「100％自分でやったとも言えるんですけど、TSUBOIさんにミックスをやってもらったから他人事として聴ける部
分もあるわけですよ。だから今回のアルバムは自分でもいつもより楽しんで聴ける」。

　サンプラーひとつを抱えて、録音に現場にとあくまでフットワークが軽いイルリメの第2章。そのスタートはゼロからではなく、2にも3にもなりそうだ。

▼イルリメの作品および参加作品の一部を紹介。

000年のデビュー作『イるreメ短編座』（イルリメ）