インタビュー

Chains

京都在住の10年選手、フレッシュに香り立つ完熟グルーヴが詰まった初のフル・アルバムを発表!


 音楽は熱や匂いを直接伝えることはできないけれど、結成から10年を迎える京都在住の5人組バンド、CHAINSにはそれが可能である。そんなことを信じさせるような初のフル・アルバム『日和見スコープ』がここに完成した。

「僕ら、好きな音楽がバラバラやったりもするんですけど、共通してる点は学生時代からブルースやソウル、ファンクのカヴァー・バンドをやってきた人間っていうことですね。いまの僕らにはいろんな振れ幅の曲があるんですけど、その根底には僕らなりの解釈によるグルーヴがあって、それがなんとなく香ってきたらいいかなと思ってます」(新村敦史、ヴォーカル/ギター:以下同)。

 グルーヴを香りで伝える、というある種の奥ゆかしさを持った彼らは、くるりやキセルらが在籍した大学の音楽サークルの先輩にあたる。形のうえでは後輩たちに先を越されてしまったが、ここでの話に関して言えば、それはプラスを意味する。なぜなら、彼らには熟成発酵を経てこそ醸し出せる熱や匂いがあり、それは時間がかかるもので、ルーツ音楽の偉人たちが頻繁に訪れることで知られる京都のライヴハウスで叩き上げられたという特異な状況下で、初めて成立するものであるからだ。

「初めて行ったライヴハウス、初めて出演したライブハウスが磔磔とか拾得で、客としてもよく行ってたし、そこから受けた影響はかなりあります。それが京都的なのかどうかはわからないですけど、少なくとも時間の流れは遅いというか、ぬるい。しかも、ライヴハウスにノルマがなくて、客を呼べないバンドでも気に入られたら出してもらえるし、ライヴ後にそのまま夜遅くまで飲めるっていう環境は確かにあります。曲が生まれる過程にしても、いちおうちゃんとした曲として演奏するんですけど、歌メロやアレンジを変えて、セッションじみたライヴを繰り返しながら形にしていくんです」。

 ただし、ジャズに近いプログレッシヴなリズムが怒濤のように押し寄せる“モータースピード”のような曲をさらりとやってのける彼らは、言うまでもなく現在進行形のバンドであり、その歩みは、ウッドストックの近くに居を構え、独自な発展を遂げたマーキュリー・レヴに近いタイムレスなものだ。

「このアルバムの曲は、作った時期もバラバラやし、初のフル・アルバムということで、僕らはこういうバンドですよって自己紹介できるような内容になったんじゃないかな、と」。

▼CHAINSがこれまでにリリースしたミニ・アルバムを紹介。

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掲載: 2003年06月05日 13:00

更新: 2003年06月05日 18:47

ソース: 『bounce』 243号(2003/5/25)

文/小野田 雄