インタビュー

小谷美紗子

多面的魅力を放つシンガー・ソングライターのロマンティックなニュー・アルバム『night』!!


 小谷美紗子はたしかに〈ピアノ弾き語りの女性シンガー・ソングライター〉だが、その言葉にあるどこか静かなイメージだけでは彼女を語ることはできない。それはフェイヴァリット・アーティストにレッド・ホット・チリ・ペッパーズ、ナンバーガール、イースタンユースを挙げる彼女の嗜好性を見てもあきらかだ。

「それはあくまでも私が好きな音楽だから、それをみんなに知ってもらわなきゃいけないとは思ってないし、あくまでも私の作ってるもので判断されればいいと思ってます。イースタンユースの吉野(寿)さんみたいにまったくジャンルは違うけど、いっしょにやろうって言ってくれる人もいるから。〈小谷美紗子とイースタンユース、なんでいっしょにやるの?〉って言う人もいれば〈スピリチュアルなところで繋がるものがあるのわかるよ〉って言ってくれる人もいるし。そういうわかってくれる人が増えてけばいいなって」。

 小谷美紗子の6枚目となるニュー・アルバム『night』がその契機のひとつになることは間違いないだろう。高野勲、デヴィッド・キャンベル、河野圭などのアレンジャーと自由に戯れる11曲は、彼女の多面的な魅力を映し出す。そしてどれもシンプルなアレンジに着地しているからこそ、その真ん中を貫くごく個人的な題材を扱った歌詞が痛いほど響く。

「たまたまデビュー前に好きだった人が英語かフランス語しか通じない人だったんで、純粋にその人に向けるラヴソングは全部英語になるっていうのもあったし、相手が日本人だったら自然と日本語になったりとかします(笑)。伝えたい相手が誰かっていうのがいちばん重要です」。

 かといってプライヴェートな質感だけでは終わらせない。吟味された言葉の行間や、アメリカン・ロックの乾いたテイストを吸収したようなどこまでも広がるメロディーのなかにはどこかドリーミーなムードがあり、それは『night』を聴いた多くのリスナーが共有するであろうロマンティシズムだ。

「たまたま〈夜空〉とか〈星〉とかそういう言葉を使ってるし。ダークな意味の〈night〉ではなくて、ちょっとロマンティックというか。本当に星がいっぱい光ってて明るい夜、みたいな感じの雰囲気なのかな?って」。

 ホントにそういう雰囲気です。

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掲載: 2003年06月05日 14:00

更新: 2003年06月05日 18:46

ソース: 『bounce』 243号(2003/5/25)

文/内田 暁男