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インタビュー

Hang On The Box



ギャル・バンドの狼煙が北京でも……。ハング・オン・ザ・ボックスのアルバムが登場だ!! 


 SARSはともかく。

 北京から、ハング・オン・ザ・ボックスの2枚目。〈私は私のもの/誰も私の心に踏み込むことはできない〉の詞で始まるアルバム。ヴォーカルの王悦(ワン・ユエ)は、かしましく、とんきょうで、舌足らずな英語でこんなふうにも歌う、〈X・レイ・スペックスが私を打った/歯が折れて/口がきけなくなっちゃった〉。コンピ『北京絶叫』で北京パンクの異色として紹介されて3年、日本のスケートボード・カルチャー誌で〈北京のレインコーツ〉と紹介されて2年。

「まあ〈FACE〉とかね、読むわけ。でも雑誌を追っかけたりはしないの。映画はね、コーエン兄弟のが好き。ビデオは多くて日に4、5本観るの。あとね、窪塚洋介、好き」……王悦はのたまう。アメリカ・ツアーでの経験は「牛尸穴!」(ニウビー=北京っ子たちのあいだで最高、の意)だった。

  ビキニ・キルとライオット・グァールルルルルズを引き合いに出され、チボ・マットをお気に入りのバンドに挙げる彼女たちは、ハードなフェミニストを嬉しがらせるような詞、ミニスカートを履いたことのあるすべての女の子に噛んで含めたくなるような詞をアルバム『Di Di Di』に乗せる。“Be My Seed”はフェラチオのことだ、きっと!

「私たちは〈Girl〉で〈Lady〉なの。女の子として感じたことを当たり前に歌ってるだけ。特筆すべきことじゃないわね」(王悦)。

「でも男のあんたにその気持ちをわかってもらえたのは嬉しい」(沈静〈シェン・ジン〉、ドラムス)。

 アルバム『Di Di Di』に詰め込まれているのはさらに、これも舌足らずなギター。スタイルはしっちゃかめっちゃかで、しかし元気いっぱいで、だから聴き手をウキウキさせずにおかない。成熟はいらない。いかんともしがたく頬を緩めて『Di Di Di』は聴かれる。

 ハング・オン・ザ・ボックスというネーミングに意味はないそうだ。ただ、彼女たちが彼女たちであることに意味がある。

「〈No Future In China〉だわね。中国では誰も私たちを気に入ってくれない」(王悦)。

 聴くよ、俺ら、日本で。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年06月12日 16:00

更新: 2003年06月12日 18:10

ソース: 『bounce』 243号(2003/5/25)

文/村松 タカヒロ