downy
よりタイトに、繊細に――downyの新たな展開が繰り広げられる、名のない傑作がまた!
「オウテカの新しいヤツぐらいですかね。あんまり最近(CDを)買わなくなって……自分でやるほうがおもしろくなっちゃって」。
〈聴くほうでは最近何が好きですか?〉という質問に対する、downyのヴォーカル/ギター、青木ロビン(発言、以下同)の答えがこれ。わかる。音楽マニアの宿命ともいえる、膨大な情報との追いかけっこもそれはそれでおもしろいが、先鋭的なアーティストがその一方的な流れを自力で超えていこうとするのも、また宿命である。ドラマーと映像担当の2人がメンバー・チェンジし、新生downyによる通算3枚目のアルバム『無題』(タイトルなし)のギリギリまで引き締まったサウンド、美しく繊細なギターのリフとメロディーとの絡み合いは、あきらかにこれまでのdownyとは一線を画した高度なレヴェルに到達している。
「とくにドラムが代わるというのは、バンドにとっていちばん大きいことだし。かなり音がタイトになりましたね。今回は、〈トラックを作る〉という意識が強かったんですよ。いわゆるAメロ→Bメロ→サビっていうバンドじゃないんで、ヒップホップのトラックを作るような感じでおもしろいんじゃないか?と。作業は早いし、昨日やったものを聴いて冷静な判断ができるし、効率が良かった。潔くなるしね。〈いいじゃん!これで〉って」。
綿密な計算のうえで発動される直感に賭けている、というようなニュアンスのことを彼は言う。わかる。おそらくその逆でも駄目だし、どちらかが欠けてもこの秩序だった静謐な世界は作り出せなかっただろう。かつてのdownyと比較して驚くのは、ノイズ的ギターがほとんど除去され、結果ヴォーカル・トラックが引き立った、アコースティックかと思うほどの生々しい音作りがなされていることだ。
「あんまり好きじゃなくなってきてるんですよ。歪ませたロック・ギターの手法ではない方向で、いまはやっていきたいんですね。だんだんとシンプルな、淡々とした感じになってきてると思います。ひとつひとつの楽器のメロディーを大事にするために要らないものをもっと抜いていく、ってことだと思うんですけど。メロディーのアンサンブル、リズムのアンサンブルだけで抑揚を出していきたい」。
アルバムに続いて、新曲を映像化したものと過去のライヴ映像とをカップリングして、さらに新曲入りCDも付いた初のDVDも出る。そちらも併せれば、downyという孤高のバンドの魅力が一望できるだろう。
▼downyがこれまでにリリースしたアルバムを紹介。