インタビュー

Lamp

「30歳になっても40歳になっても聴けるものを作りたい」


左から、染谷大陽、榊原香保里、永井祐介

「あ、これ誰の曲だっけ?」

インタビューに入る前、その場に流れていたケニー・ランキンのカヴァー曲に敏感に反応して盛り上がる3人のメンバー。――今年4月にミニ・アルバム『そよ風アパートメント 201』でデビューしたLampは、ソフト・ロック、AOR、シティー・ポップ、ボサノヴァなどをフラットに吸収し、〈90年代を通過した耳〉でもってそれらをメロウに織り上げてみせた。ソフトでありながらも複雑に絡み合う男女ツイン・ヴォーカルのハーモニーと、メロディーラインのキャッチーさが、耳ざとい都市生活者を早くもトリコにしつつある。彼らの音楽は、どのような背景から誕生したのだろうか。

「僕がバンドを組もうと思っていた時によく聴いていた曲が、ハーモニーが綺麗なものとボサノヴァだったんですね。その2つが合わさったものがやりたくて。高校の後輩だった永井とバンドをやることは決めていたから、女の子ヴォーカルを探していて、友達に(榊原)香保里さんを紹介してもらったんです」(染谷大陽、ギター)

冒頭で触れた、ケニー・ランキンのカヴァーに反応するあたり、彼らは22~23歳という若さにして、かなりのポップス中毒のようだ。それは、彼らのオフィシャルサイトに掲載されている、愛情たっぷりのアーティスト・レビューからも伝わってくる。

「僕はとにかくボサノヴァが好きなんです。60年代のスタンダードなものはほとんど聴いているし、70年代のポップス寄りのものも結構聴いていると思います。中でもカエターノ・ヴェローゾとイヴァン・リンスは特に好きなんです」(染谷)

「私は小沢健二が好きだったんです。で、そこを入り口にして日本の昔のもの、例えばチューリップなんかを聴くようになりました。それからソフト・ロックなんかにも興味を持つようになって」(榊原香保里、ボーカル/フルート他)

「別に今ある音楽を否定するわけじゃないんですけど、僕ら3人とも今の音楽よりも、昔の音楽のほうに魅力を感じることが多いんです」(永井祐介、ボーカル/ベース他)

Lampの楽曲から感じる、あらゆる音楽の〈うまみ〉をぎゅっと閉じ込めたような独特の空気感は、メンバーそれぞれの嗜好が反映されているところからきているようだ。だがしかし、彼らの音楽は、90年代に行われてきたような、過去の遺産を再編集して甦らせるという行為に終わってはいない。

「好きだからといって、過去の音楽の焼き直しをしようとは思わないです。影響はどうしても出てしまうとは思うんですけど、自分の中で一度きちんと吸収して、今のポップスとして完成度の高いものを出していきたいんです」(染谷)

高い次元での普遍性を持ったポップスを、スタイルの模倣ではなく、核心から継承するという意気込み。〈ポップ・ミュージックの継承者〉としての自覚は、染谷のこんなセリフからも伺うことができた。

「このバンドを始めたときに考えていたのが、自分が30歳になっても40歳になっても聴くことができるものを作るっていうことなんです。後々になって自分の音楽活動の歴史を振り返ってみたときに、一貫したものを持たせたいんですよ」(染谷)

・『そよ風アパートメント 201』収録曲
1. 風の午後に(フルレングス試聴♪)
2. 街は雨降り(フルレングス試聴♪)
3. 雨足はやく
4. 今夜の二人
5. 冬の喫茶店
6. 部屋の窓辺

カテゴリ : ニューフェイズ

掲載: 2003年06月23日 18:00

更新: 2003年06月26日 15:42

文/bounce.com編集部