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インタビュー

クレイジーケンバンド

夏のラッキー・アイテムになること必至! CKBの新作『777』のテーマは、スバリ〈真夏の狂気〉!?


 昨夏のアルバム『グランツーリズモ』をリリースしてからこっち、止まることなく日増しにヴォリュームを上げていく狂剣狂想曲。噂がさらなる噂を呼び、ワンアクションごとにメディアは右往左往、ライヴは軒並み瞬時にしてソールドアウトを記録。と、そんなバンド史上最高潮ともいえる状況のなか、ついに届けられたクレイジーケンバンドのニュー・アルバム、その名も『777』(ナナ、ナナ、ナナ)。プレイボタンをひとたび押すと、まず耳に飛び込んでくるのは、70年代のマーヴィン・ゲイをも彷佛とさせる、スムース&メロウなミディアム・バラード。聴き進めていくにつれ、頭が徐々にホワイトアウトしていくかのような──せつなさとも、やるせなさとも違う、この胸苦しさをも伴った、得も言えぬ感慨はいったいナニ?

「今回の作品では、具体的にいうとクール&ザ・ギャングの“Summer Madness”や、矢沢永吉さんの“ひき潮”とか、ああいった目眩っぽいサウンドを前面に押し出そうと思ったんです、ええ。いわゆる〈真夏の狂気〉っていうか、こう、真夏の一瞬に突如陥る〈ギャー!!〉っていうあの感覚を。クールスの時代から一貫して表現したいテーマだったんですけど……それを今回、メロディーでうまく表現できて」(横山剣、ヴォーカル:以下同)。

 そうした〈凪ぎ〉の要素を全編に漂わせつつ、マガマガしいまでに猥雑な要素をしっかりと盛り込むことで、聴き手に心地良いハレーションを与えてくれるのも、やはりCKBのCKBたる所以。

「黄昏れ度○○%っていう、そのへんの調和も非常に難しいんです。あまり黄昏れすぎると……(掲載自粛)……とか、ああいった感じになっちゃうんで(笑)。そのあたりのバランスには非常に頭を悩ませましたね」。

 オープニング3曲で紡ぎ出されたメロウ・ソウルのシルキーな薄皮を、ウィリー走行でブチ破るようにして飛び出すパンチの効いたガレージ・チューン“爆発!ナナハン娘”しかり、ギタリストの小野瀬雅生がジミヘン顔負けの超絶ギター&流暢なハングル語ヴォーカルを披露する、素頓狂なカッコよさに満ちあふれた“美人”(〈韓国のジミヘン〉ことシン・ジュンヒョンのカヴァー!)しかり。このキメっぷりと脱ぎっぷりの良さにこそ、CKBというバンドの本質がしっかりと集約されているような。また、それとは異なる意味で今回、バンドのさらなる〈脱ぎっぷり〉を確認できるのが、コモエスタ八重樫にアレンジからオケに至るまですべてを外注したというナンバー“パナールの島”。

「曲ができた時点で、このオケを作れるのは八重樫さんしかいないだろうと。バンドだからって何をやっちゃいけないっていうのはないわけですし、ましてや法に触れるわけじゃないんだから(笑)。勝手に進めるわけにはいかないので、メンバーにはもちろん相談しましたけど。ただ、これをソロ名義で出したら、また聞こえが違うと思うんです。あくまでも、この曲をCKBとして出すことに意味があるんですね」。

 Rhymesterや須永辰緒といった、いわゆる〈わかってる面々〉によるナイスなジョブにも要注目。

「辰緒さんやRhymesterは、みなさんかっこよさの基準みたいなものを共有できる関係なので、やっぱりいっしょにやっていて楽しいですし、なによりも心強いですよね」。

〈いざ鎌倉〉ならぬ〈いざ横浜〉といった様相を呈し、心ある音楽ファンはもちろん、志を同じくするアーティストをも巻き込んで、さらなる拡大を続けるCKBワールド。〈♪かっこいい世界は探せばきっとある〉。名曲“かっこいいブーガルー”で剣さんはこう歌っていたけれど、それをもじって言うならば、つまりはこういうことだ。

 かっこいい世界は……探さずとも、いまここにある!

▼横山剣の言う〈真夏の狂気〉的楽曲が収められたアルバムを紹介

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年06月26日 15:00

更新: 2003年06月26日 19:46

ソース: 『bounce』 244号(2003/6/25)

文/望月 哲