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インタビュー

スパルタ・ローカルズ


 スタートを告げるトランペットが、いままさに吹き鳴らされようとしている。しかし、いつまで経っても、それが吹き鳴らされることはないし、気が付いたらすでに走り出していた4人の軌跡はジグザグで、コースは遥か彼方。ゴールがどこにあるのかさえ定かではない……。

 福岡出身の4人組バンド、スパルタローカルズのメジャー第1弾アルバム『セコンドファンファーレ』の、一瞬にしてガラリと変わるリズム・パターンや、ツボを突いているようで微妙に外してみせるメロディーは、そんなイメージを想起させる。

「僕らにとって気持ちいいのが、こういう跳ねるビートなんですよね」(安部光広)。

「もちろん、同じビートで押し切るのもぜんぜんアリなんですけど、いま僕たちがやってるのは、1曲のなかでリズムの展開をどんどん変えていきながら、コード進行で奇妙な感じを出したり……ただし、奇妙なままだとマニアックなものにしかならないから、そこはわかりやすいメロディーじゃないと駄目だろうし、ポップじゃないとイカンな、と」(安部コウセイ)。

 積極的に主流から外れることによって、リアリティーを模索しようと果敢に試みる彼らのスタンスは〈ニューウェイヴ〉のそれを容易に連想させるが、その〈見知らぬ時代の音楽〉に対する彼らの感想はその姿勢同様、実に掴みやすく、同時に掴み難いものだった。

「何も知らないくせにプライドだけは高かった時期に、〈スパルタローカルズって、テレヴィジョンに似てるね〉って言われて聴いてみたんですけど、最初は格好良くないなと思ったんです。でも、聴いてるうちに良くなってきて、それからいろいろ聴くようになった。(ニューウェイヴとは)最初はディーヴォみたいに電子音がピコピコいってる音楽のことを言ってるのかな?って勝手に思ってたんですけど、そうじゃないってことを最近知りました。聴いてみたら、やっぱりカッコイイっすよ。だから、俺らも真似しようと思って(笑)。どうせ、この世になかった曲なんて作れないんだから、表面はどうでもよくて、結局、大事なのは人間味なのかな、と」(コウセイ)。

 すべてが白日のもとに晒されてしまったいま、オリジナリティーはそうそう生まれるものではないと語る彼ら。それでは走る前からすでに勝敗は決まってしまっているから……とすべてを諦めてしまっているのかと言えば、彼らは設定されたコースやゴールを端から無効とすることで、わが道をひた走る。ただし、それは決して孤独な旅ではなく、その先には共感を覚えるという54-71やモーサム・トーンベンダー、(向井改め)無戒秀徳といった先達もいる。

「不完全なところ、いびつなところに魅力を感じるんですよね。見たり聴いたりしていて共感を覚えるのは、そういう弱さやあったかく感じる部分ですよね」(コウセイ)。

 本作に収められた全11曲は、インディーでリリースしたアルバム『悲しい耳鳴り』に続く彼らの迷走の記録であり、そこには笑いや悲しみ、真実やユーモアが前作以上の大きな振れ幅で刻まれているが、つまりはそれこそが彼らのめざす〈音楽における人間味〉であり、見知らぬ風景に聴き手を引き込む大きな魅力である。

「ひとつのことをしゃべっていても、次の瞬間は別のことを考えていたり……人間ってひとつの側面だけじゃないと思うんですよ。だから、シリアスなものだけを打ち出すのは嘘っぱちに見えちゃうし、俺たちがやっても様にならない。だったら、もっと正直に生きてる可笑しみとか悲しさを含めて、曲で表して、結果的になんとなくぽわ~んと優しい気持ちになって、希望は……あるかもなあ、って思ってほしい」(コウセイ)。

PROFILE

スパルタローカルズ
98年末、安部コウセイ(ヴォーカル/ギター)が、同級生だった伊東真一(ギター)、中山昭仁(ドラムス)、弟の安部光広(ベース)を誘い、バンドを結成。翌99年から地元・福岡で本格的なライヴ活動を開始する。2002年4月にはファースト・アルバム『悲しい耳鳴り』を発表、それに伴った初のツアーや〈フジロック〉をはじめとするライヴ・イヴェントでの圧倒的なパフォーマンスで、全国的にその名を知らしめていく。2003年初めから2度目の全国ツアーを敢行、4月にはシングル“POGO”をリリースし、各方面からの注目度を一気に上げていく。さらなる期待が高まるなか、メジャー第1弾となるアルバム『セコンドファンファーレ』(ユニバーサルJ)が7月2日にリリースされる。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年07月03日 10:00

更新: 2003年07月03日 18:34

ソース: 『bounce』 244号(2003/6/25)

文/小野田 雄