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インタビュー

KENZI MASUBUCHI

マジカルでマッドでドリーミーな一大ポップ絵巻──SCAFULL KINGのギタリストが放ったソロ・アルバムは2003年のマスターピースだ!!


 SCAFULL KINGのギタリスト、KENZI MASUBUCHIの『TALES OF THE AXXE PLAYER-ギター弾きにまつわる物語-』はまるで閃光のようだ。櫛引彩香や真城めぐみ(ヒックスヴィル)、NEIL & IRAIZAなどが参加し、トータル・タイム35分を一気に駆ける本作のその輝きは、2003年の現在までに生まれたポップ・ミュージックのなかでも一際まばゆいもので、僕はそれにメロメロに魅了されっぱなしだ。

「歌い手さんが女性だったりホーンが入ってないっていうのはあるんですけど、メロディーとかあんまり変わってないと思うんで、スキャフルのメロディーが好きで聴いててくれた人はそのままスンナリ聴いてくれると思う」。

新興レーベル、Niw! Recordsからリリースされた本作は、ジャズ、ボサノヴァ、フュージョン、ギターポップ、ディスコ、ファンクなどの要素が高速BPMビートのうえでクルクルと表情を変える。それはまるでポップ・ミュージックの世界万博のごときドリーミーな一大絵巻だ。

「たとえばボサノヴァだったりフュージョンぽいものだったりを突き詰めて聴いたわけではなくて。僕の場合まずギターの教則本買ってきて先に覚えちゃうとこから始めて、あとはもうそこから追究しないで自分の曲に合わせていくという方法なんで。だから逆に〈ボサノヴァのギターにはドラムやベースがこういうふうに付く〉とかいう頭がない。で、こういうふうになっちゃうんだなっていう(笑)」。

 生サンプリングとも言うべきそんな手法は音楽のジャンルや文脈を過激なまでに無化し、全てを彼の快感原則に従わせる。それは彼の音楽の聴き方にも反映されているのだ。

「中学くらいはトイ・ドールズ、フィッシュボーン、ジャミロクワイ、ファンカデリック、マノ・ネグラとか全部揃ってたんですけど、ちゃんと自分で曲書こうと思った20、21ぐらいからそういう買い方しなくなりましたね。いまは知り合いのレコード屋行って、オススメを教えてもらってその人のオススメをバーって買ってきて聴くとか。あとは自分の好きなアーティストにミックス・テープ作ってもらうっていうのをよくやってるかな」。

 ある意味男子特有のオタッキーな〈アーティスト聴き〉から女の子的なイイ意味での〈つまみ聴き〉にシフトした瞬間、彼の楽曲にはあらゆる要素が高密度に凝縮されだした、ということか。その結果本作の手触りにはエディット感覚の狂ったポップと言うべき位相があり、それは以下のような、アレンジに関する彼のアングルが大きく関係してもいる。

「元々の名曲を打ち込みにしてすごいかっこいいリミックス盤とかあるじゃないですか? あれを最初から作りたいっていう感じ。だから自分で作った曲に対してそれをどうリミックスするか?みたいなアレンジ作業」。

ほとんど全編生演奏で統一されていながら、打ち込みのダンス・ミュージックとしても充分機能する本作の手触りは確実に2003年仕様といえるだろう(ちなみに彼はダフト・パンクやフェニックスが大のお気に入りでもある)。現在彼はLOW IQ 01を中心としたバンドMASTER LOW(01)や、SCAFULL KINGのSYUTA-LOW TAGAMI、TADAAKI "TDC" FUKUDAとのユニット、FRONTIERBACK YARDのメンバーとしても活躍するなど多忙を極めているが、こんなにも魅力的な作品を作られてしまったら、ソロ・アーティストとしての今後に期待せずにはいられないってもんだ!

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カテゴリ : ニューフェイズ

掲載: 2003年07月03日 16:00

更新: 2003年07月03日 18:32

文/内田 暁男