bonobos
〈大げさな日々はいらない〉ささやかなる新世代ダブ・ポップ・バンド
左から、松井泉、蔡忠浩、佐々木康之、森本夏子
EGO-WRAPPIN'やCOPA SALVOとの競演で、もっかじわじわと注目を集めている大阪のダブ・ポップ・バンド、bonobos(ボノボ)。ルーツレゲエやダブ、ラテンといった要素を多分に盛り込みながらも、ディープには走らず、同じく大阪のDETERMINATIONSや、THE Miceteethなどのビックバンドともひと味違う、あくまで〈うた〉が真っ直ぐ耳に届くフレンドリーな楽曲を聴かせてくれる。
もともとは、ラリーパパ&カーネギーママを脱退した蔡忠浩(ヴォーカル/ギター)が、「音楽をやめるわけにもいかず、半ば意地で宅録を始めた」という所からスタートしたバンド――ってな話も、妙に納得。〈大げさな日々はいらないよ〉といったナイーブさとシニカルさに彩られた蔡のパーソナルな歌世界が、日なたの匂いのするバンド・サウンドに乗せて、ゆっくりと宙に解き放たれてゆく絶妙な気持ち良さは、イヤミでなく「フィッシュマンズ(しかも初期)っぽい!」と感嘆せずにはいられない。
「フィッシュマンズは大好きだし、影響を否定するつもりは全くないです。僕ひとりでやってたら、たぶんモノマネみたいになってたと思う(笑)。ただ気分的にも、このまま独りでやっててもどうにもならん、という感じになってきて――。曲とかリズムの感じは、当時から基本的には一緒なんですけど、僕は楽器が弾けるけど弾けないので、何を録ってもものすごい曖昧なものになっちゃうんですよ。でも、なっちゃん(森本夏子、ベース)とか小次郎くん(佐々木康之、ギター)とか松井くん(松井泉、パーカッション)は、各々その道のしっかりしたプレイヤーだったんで、そういう意味ではバンドになってからの音は全然違う。個々の演奏の深みによって、ポップだけどアーシーな、一番いいところに自然に収まってる感じはありますよね」(蔡)
先日リリースされた初正式音源となるミニ・アルバム『Headphone Magic』は、そんな彼らのピースなヴァイブレーションが無理なく発揮された好盤。
「みんな初めての録音なんで大変かなーと思ってたけど、作りたい音の方向性が蔡くんの中にしっかりあったので、煮詰まることなくやれましたね」(佐々木)
「(アルバム収録曲は)ライヴでやってた曲が大半で、アレンジも練られてたんで、レコーディングだからと特別なこともなく、今のbonobosの音を素直に出した感じですね。やっぱり大事なのは、しっかりとしたグルーヴと歌。ダブのどこが魅力かって、そんなに素材がいっぱいなくても豊かにできるよっていう、その姿勢に尽きるんですよ。僕らは音楽的にはいわゆるダブ・バンドではないけど、その感覚は大事にしたいなあって」(蔡)
その〈素直さ〉が、すなわちbonobosの〈豊かさ〉のヒミツ。ウォークマンで散歩しながら口ずさんでいると、いつもの風景がふと愛おしく感じられて、嬉しいような切ないような気分で空を見上げちゃう。〈あの感じ〉は、ごくありふれたようで、マネしようと思って決してマネできるもんではない。
ちなみに、ボノボとはザイールのコンゴ共和国の森に住む、人間にいちばん近いサルの名前。平和をこよなく愛する彼らは、争いが起こりそうになると〈ホカホカ〉なる独自のコミュニケーションでそれを回避するんだそうで…。人間のバンドのボノボも、ホカホカならぬホッコリ・リズムであなたの日々にピースな至福をもたらしてくれるはず!?
・『Headphone Magic』収録曲
1. Mighty Shine, Mighty Rhythm(試聴)
2. スモーク(試聴)
3. Headphone Magic(試聴)
4. 汚れた部屋(試聴)