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インタビュー

O.P.King


 O.P.KINGは、さながらプロ野球のベテラン投手のようである。〈豪速球〉〈奪三振〉といった個人技に美学を求める概ねの若手たちとは違って、変化していく試合状況のなか、ときに力いっぱい、ときには手加減しながら要所要所を締めていく巧みな投球術は、まさにO.P.KINGのロックンロール観に通じる印象で。

「意気込むときと力を抜くときのバランス、そのいちばんいいポイントはどこなのかっていうのが重要なところかも知れませんね、O.P.KINGにとって。〈力を抜く〉っていうのは、俺のなかで大きなテーマとしてあって、音楽にしてもそうなんだけど、家事やるにしても野球やるにしても……」(YO-KING)。

「あと酒の量ね(笑)。適量がいまだにわからないから(笑)。ベテラン投手? だったら、伊良部(阪神)ぐらいということで(笑)」(奥田民生)。

 メンバーである奥田民生の〈O〉、The ピーズ、the pillowsの〈P〉、YO-KINGの〈KING〉をくっつけた、なんとも直球な(笑)バンド名のO.P.KINGは、そもそもとあるライヴ・イヴェントにおける一夜限りのセッション・バンドだったはずで……。

「チャック・ベリーさんとライヴができる、っていう話があって……それで、またやりたいなってことになって(笑)。(チャック・ベリーに)対抗意識はないけどね(笑)」(YO-KING)。

 というわけで、ロックンロールの神様に導かれた4人は、この夏限定という形で本格的に始動。とはいえこのスペシャルなバンド、お写真をご覧になっても窺えると思うんですが、これまでずーっといっしょにバンドをやってきたかのような、違和感のない佇まいを醸し出しております。

「やっぱほら、いっしょにいて疲れる人とはいたくないじゃないですか。だから、第三者から見たら意外性がないのかなって思う。ま、それぞれ違うんだけど、ある部分似た匂いがする……」(YO-KING)。

「見た目のビンボー臭さとか(笑)」(大木温之)。

 さてさて、そんな彼らのミニ・アルバム『O.P.KING』は、メロディー・パートごとに分業で制作したものを元に、強引ながらも痛快に組み上げたロックンロール・ナンバー“O.P.KINGのテーマ”でプレイボール。そして「ピーズだと社会的なこと歌わないからね。今回はせっかくだから(笑)」(大木)という“ミサイル畑で雇われて”ほか、それぞれの楽曲が続き、後半のカヴァー合戦では、もはや誰がオリジナル奏者なのかわからないぐらいスタンダードなロックンロール・ナンバー(“Bad Boy”“Rip It Up”“Hippy Hippy Shake”など)を披露。締めくくりは共作によるセンチメンタル・ナンバー“通り過ぎる夏”でゲーム・セットという内容。ムダなくテンポ良く進んでいくピッチング……ならぬ演奏は痛快。この〈ムダなくテンポ良く〉ってのがキモで、百戦錬磨の男たちだからこそ、それを〈魅力的なもの〉として多くのみなさんの心をグィッと掴むであろうものになっているわけで。

「ぜんっぜん難しいことやってないですけどね。中学レベル(笑)。それをなんで30ウン歳のヤツがやってるかっていうことに意義がある(笑)。中学レベルだけど、中学生とは違うんだぞ!と」(奥田)。

 最後に、なにかと投手陣……いやソングライター陣に注目が集まってしまいがちなO.P.KINGですが、野球で言うところの女房役=キャッチャー的役回りも忘れちゃいけません。佐藤シンイチロウが刻む、大胆かつワイルドながらも粒の揃った礼儀正しき紳士的ビートは、O.P.KINGというシンプルな楽曲構成のロックンロール・バンドにおいて、よりその真価が発揮されていると思われます。

「ありがとうございます……って礼儀正しいですね、やっぱ(笑)」(佐藤)。

PROFILE

O.P.KING
ライヴやレコーディングでのゲスト参加などでかねてから交流のあった4人──YO-KING(ヴォーカル/ギター)、奥田民生(ヴォーカル/ギター)、The ピーズの大木温之(ヴォーカル/ベース)、the pillows/The ピーズの佐藤シンイチロウ(ヴォーカル/ドラムス)による、この夏限定のスペシャル・バンド。2003年3月に行われたライヴ・イヴェント〈TODAY〉におけるセッションをきっかけに結成~活動へと至る。8月1日に行われる〈ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2003〉をはじめとする夏のライヴ・イヴェント出演に先駆けて、このたびミニ・アルバム『O.P.KING』(SME、キューン、キング)が7月30日にリリースされる。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年07月31日 13:00

更新: 2003年07月31日 18:03

ソース: 『bounce』 245号(2003/7/25)

文/久保田 泰平