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インタビュー

CUBISMO GRAFICO

ふたつの舞台で繰り広げられる、チャーベくんのチャーミングなポップ・ワールド!


 CUBISMO GRAFICOこと松田岳ニ(愛称、チャーベくん)は、最高に素敵なヤツだ。和やかな雰囲気作りに長けたDJとして以前から有名だが、クラブ以外のあらゆる場面でも類希なるムードメイカーの才能を発揮。その魅力に惹かれて仲間がどんどん集まってくる。それを証拠に、先ごろ初のアルバム『CINQ(four+one)』を発表した彼の新バンド、CUBISMO GRAFICO FIVEは、〈スーパー・バンド〉とも呼べそうな錚々たる顔ぶれだ。恒岡章(Hi-STANDARD)、田上修太郎(スキャフル・キング)、古川裕(DOPING PANDA)、そして人気セッション・ベーシストの330。ね、すごいでしょ? でも、そもそもの始まりは、とあるクラブ・イヴェントの余興だったという自然発生の〈パーティー・バンド〉なのだ。

「メンツだけ見て音を想像すると〈パンク〉と思われるんだろうけど、みんなそういうのだけ聴いてる人たちじゃないから。たとえばラテンぽい曲も、ぼくが提案したわけじゃないのに、そういうふうになったりするのね。恒ちゃんのドラム・アレンジだったりとかで」。

 それぞれが中心となる活動基盤を持ったうえで、愉しみを分かち合いながら演奏する究極の放課後バンド! フェアグラウンド・アトラクションやブッカーT&ザ・MGズのカヴァーも含む多彩なレパートリーからは、誰もが知っているフレーズがまるでサンプリングされたようにひょっこりと飛び出し、遊び心も満点だ。

「サンプリングって、なんか初期衝動じゃん。バンドのアイデアを考えるときに、アレンジがパッと出てこなくてもすぐ思い浮かぶのが〈あのレコードのこれだ!〉とかそういうふうになってくるし」。

 それをパクりとかいうのは野暮ですぜ。ここには、ゴキゲンなパーティーに必要なものがバッチリ揃っているのだから。

 さて今回、CUBISMO GRAFICOとしての新作『Vocoder Block Diagram』もリリースされる。こちらは〈FIVE〉でのライヴ感ある表現の反動として、ほぼ全曲で発声を機械的に変調させた、ヴォコーダーによる歌声をフィーチャー。今日のポップ・ミュージックでふたたび注目されている、あの甘く心地良い響きを軸に、トータル・アルバムとして聴き応えのあるDJ気質のポップス世界を繰り広げている。そして、これまでと同様、旬の音に敏感なチャーベくんらしい、爽快でチャーミングな新鮮サウンドを満喫できる。

「DJがいる場所にいる、っていうのがすごく大事なのかなと思って。それこそ仲(真史)くんのDJとか……あと、コレットのパーティーでさ、トレヴァー・ジャクソンとか2・メニー・DJズとかのプレイを見たときに〈あ、こういうのでいいんだ!〉〈あまり自分は手本にしないモノだな〉とか。どんなDJでも、DJのいる場所に身を置くっていうのはすごい刺激がある」。

〈DJが音楽を作る〉ということがとっくにあたりまえになっているとはいえ、〈ライヴハウス〉と〈クラブ〉のあいだには、まだまだ偏見や無意味な線を引く傾向も残っている。とっくに音楽の地殻変動は起こりはじめているのに……。そんななか、名うての連中とバンドを組み、スティール・ドラム(スティールパン)の入ったレコードがお気に入りのチャーベくんがふと口にした言葉は、時代の気分を明確かつ風通しよく表していた。

「〈STILL PUNK〉って言葉、なんか〈スティールパン〉みたいでカッコよくない?

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年08月07日 12:00

更新: 2003年08月07日 17:21

ソース: 『bounce』 245号(2003/7/25)

文/梶本 聡

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