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インタビュー

Stacie Orrico


 14歳でリリースしたデビュー作『Genuine』が全米で好セールスを記録したステイシー・オリコ。それから3年、メジャー・レーベルを味方につけての新作『Stacie Orrico』もどうやら絶好調の様子だ。イタリア系の父親とドイツ系の母親のもとシアトルで生まれ、デンヴァーで育った彼女は、まるで〈歌う妖精〉とでもいった純心無垢な佇まいが愛くるしく、それでいて根っからの音楽好きでもあった。

「アレサ・フランクリンやセリーヌ・ディオン、マライア・キャリー、エラ・フィッツジェラルドみたいなソウルフルな歌手の歌を聴いてきたの。でもゴスペルの世界で育ってきたから、ゴスペルの曲も聴いていたわ」。

 そう、もともとステイシーは俗に〈CCM〉と呼ばれるコンテンポラリー・クリスチャン・ミュージック(広義では白人系教会音楽)のシーンから登場したシンガー。だが彼女の人気の秘訣は、そうした出自からイメージされるお堅い雰囲気を感じさせずに、ごく普通の10代の女の子の恋愛感情をストレートに歌ったところにある。

「自分の正直な気持ちを出していきたいと思っているの。もちろん歌詞では悪い言葉を使ってはいけないし、セックスのことを書き散らしたりもしない。神様を信じているわ。でも人間だから時には間違いを起こすし、大変なことだってあるから、そんなことも書いておこうって。そういう意味では真のクリスチャン・ミュージックとはちょっと違うと思ってる。そういえば、デスティニーズ・チャイルドとは何回か同じステージに立ったことがあって、お互い敬虔なクリスチャンっていうことで意気投合したんだけど、彼女たちは当時14歳だった私がクリスチャン・ミュージックをやりながらメインストリームのポップっぽい音楽をやっていることに関心を持ってくれたの。ビヨンセの妹のソランジュとも年齢が近いこともあって仲良くして楽しかったわ」。

 そんな彼女、デビュー作ではクリスティーナ・アギレラやローリン・ヒルなんかとも比較されていたけど……。

「比較されるのは仕方ないわね。でも、彼女たちのようにちゃんと歌える人たちと比較されたのは光栄だったわ。私はローリン・ヒルが大好きで、ジャンルはちょっと違うけど彼女のようなアーティストになりたいと思っていたほどよ。クリスティーナの場合は……肌を露出することが多いから、そこは真似られないけど(笑)」。

 そしていま、ステイシーは17歳。この数年間で音楽的にも人間的にも成長したという彼女は、新作で、前作のプロダクションに関与したテッド・Tなどを引き続き起用しつつ、R&B畑からダラス・オースティン、アンダードッグス、デントといったヒットメイカーを招き入れ、ど真ん中のR&Bサウンドで勝負している。

「そうなの。そもそも自分の音楽のルーツってR&Bにあると思うし、いちばん影響を受けているから。特に今回はロック系のソングライターといっしょに書いた曲をR&B系のプロデューサーのところに持っていったから、いい意味でロックとR&B/ヒップホップのミックスができて良かったわね。“Stuck”は、曲を書き終えた時に、これはダラス・オースティンにやってもらいたい!って直感したの。もともとダラスが手掛けたTLCやピンクの曲が大好きで、実は前作の“O.O.Baby”はTLCの“Silly Ho”をめざしてたぐらいよ。デントは大好きなデスティニーズ・チャイルドの“Survivor”も手掛けていたしね。でも今回は自分でプロデュースやソングライト、ヴォーカル・アレンジもさせてもらえて……曲によって違うけど、歌詞だけじゃなくてメロディーだって自分で書いているのよ!」。

 生のドラムやギターの使用頻度も増えたという今作を機に、今後はもっと生っぽい音で歌ってみたいとも語ってくれたステイシー。まだまだ何にでも挑戦できる。そのぶんリスナーには無限の楽しみがあるわけで、彼女には、思うがままに突き進んでいってほしいと思う。

PROFILE

ステイシー・オリコ
86年、シアトル生まれ。敬虔なクリスチャンの家庭で育つ。幼い頃からホイットニー・ヒューストンやエラ・フィッツジェラルド、ゴスペル音楽などに親しみ、教会や学校で歌いはじめる。98年、12歳の時に出場したコンテストで優勝し、その場でスカウトされる。2000年にクリスチャン・ミュージックのレーベルからデビュー・アルバム『Genuine』をリリース、50万枚のセールスを記録する。同作を耳にしたデスティニーズ・チャイルドの誘いで彼女らのUSツアーにおけるオープニング・アクトを務め、2002年にヴァージンと契約。8月6日に日本盤もリリースされる予定のメジャー・デビュー・アルバム『Stacie Orrico』(Virgin/東芝EMI)がすでに世界中でヒットを記録している。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年08月14日 16:00

更新: 2003年08月14日 18:57

ソース: 『bounce』 245号(2003/7/25)

文/林 剛