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インタビュー

DJ Milo

UKサウンドシステム時代の最重要人物が初めてのアルバムをリリース!!


「僕よりもっと有名なワイルド・バンチのメンバー……マッシヴ・アタックのダディ・Gかネリー・フーパーに頼むべきだし、そのほうがセールスも良くなるよって伝えたんだけど、レーベル側はどうしても僕がやるべきだと言ってきてね」。

 本人も戸惑いを隠せない昨年のミックスCD『The Wild Bunch : Story Of A Sound System』で、突如表舞台に浮上したDJマイロ。ネリー・フーパーやトリッキーといった才能を輩出し、90年代にはマッシヴ・アタックへと発展していったブリストルのユニット=ワイルド・バンチでDJを務めていた男である。

「90年代は僕にとって実践の繰り返しだった。数えきれないアンダーグラウンドのヒップホップやハウスのトラックをリリースしたよ」という彼が、サウンドシステムの時代から現在のダンス・ミュージックへと発展していく過程をミックスCDで描き、いまの時代に受け入れられたのはまだ記憶に鮮明だ。

 そんななか、彼がついに初のアーティスト・アルバム『Suntoucher』をリリースした。「これは僕のレコーディング・キャリアとしても必要不可欠なステップであって、決して大きく輝かしいものではないけれども、よくできたと思う」と自己分析する今作では、非常に穏やかでリラックスした面と、それとは逆に空気の張り詰めた緊張感という、相反するものが表現されている。

「曲を作る過程において、時々何か冷たく硬い感覚を欲したり、もしくはコードやストリングスを加えることによって、自分自身がメロウな曲に惹きつけられているとわかるんだ。自分にとってかなり奇妙なことだけどね」。

 マイロ本人も自覚しているが、彼をヒップホップDJとして見ている人も多いらしい。しかし今作にはとても一介のヒップホップDJでは真似のできない、さまざまな音が詰まっている点も重要だ。

「僕の好きな音楽として、ヒップホップは大きなパートを占めてはいるけど、実際はいろいろな音楽が好きなんだ。これはトレンディー・ミュージックでもなく、子供向けの音楽でもない。これは熟達したミュージック・ラヴァーのための音楽であり、時代を超えた音楽のフォームがここにはあるんだよ」。

 成熟した音楽とはどんなものなのか? 本作でぜひ体感していただきたい。
協力/gak(Silent Fleet)

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カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年08月21日 16:00

更新: 2003年08月21日 16:19

ソース: 『bounce』 245号(2003/7/25)

文/青木 正之