インタビュー

川上つよしと彼のムードメイカーズ

この夏のスタンダードはこれで決まり! ムーディーなセカンド・アルバム『moodmakers' mood』!!


 LITTLE TEMPOやROCKING TIMEなど、レゲエ~ロックステディーを基調にしたアーティストの素晴らしい作品が続くなか、東京スカパラダイスオーケストラのベーシスト、川上つよしがバンド・マスターを務めるムードメイカーズがセカンド・アルバムをリリースする。ROCKING TIMEの山本貴志、LITTLE TEMPOの最新作にも参加していたHAKASEや大石幸司などが集った『moodmakers' mood』を、彼は〈ホテリー〉と形容する。「いかにもホテルのラウンジやロビーでかかっているような音楽」(川上つよし:以下同)を演奏する、夏の一夜といった趣も感じさせるセットは、ゲスト・ヴォーカルも豪華。古内東子によるユーミン“きっと言える”、ジョージ・ハリスンに捧げられた高橋幸宏の“Something”、Ticaの武田カオリによるバカラック“You'll Never Get To Heaven”はUKラヴァーズ風味で。そのほかのインスト・ナンバーも、変態度を増したビーチ・ボーイズ“Pet Sounds”やエキゾチック・サウンドの巨匠マーティン・デニー風まで、実に多彩。

「曖昧なものが好きなんですよね……自分のレコード棚を分類していて、ジャンル分けに困るんですよ。ジャズ、ソウル、ラテン……その狭間にある作品が多い。それにロックステディーっていう音楽自体が、スカとレゲエの過渡期に生まれたもので、いい意味でジャンルとして確立しきれていない。自由で、ちょっとキワモノでいて……そういうところに惹かれちゃって。だから今回のアルバムもそうなってますね」。

 彼の、ムード音楽へのこだわりは、イマジネーションの広がるジャケット同様、僕らを焼けつくようなリゾートや、夕暮れに包まれたモーテルに連れて行ってくれる。そんなコンセプトからは、幅広いリスナーにスカやロックステディーの良さを伝えたいという愛情も伝わってきて嬉しい。

「世間一般ではメッセージ性の強いロックが上で、ムード・ミュージックって低く見られてるじゃないですか。そんなことないよ!っていうのはすごく思っています。僕としては、ムードっていうのはフォーマットではなくて聴き方のこと。大袈裟に言うと、どんな気高い曲でも実生活におけるムード・ミュージックになり得ると思う。僕はもともとそういう音楽の聴き方なので、ムードメイカーズもなるべく限定せずに、イメージを広げて楽しんでほしいですね」。

 あらゆる要素を呑み込み、ステイタスのあるものをドレスダウンさせる。ムードメイカーズのムードに和やかさだけではないエッジ感があるのはそのためであろう。

「だって、昭和歌謡っぽいベタベタの“Harlem Nocturne”から、バカラックのおしゃれなメロディーまでをひっくるめるキーワードって〈ムード〉しかないじゃないですか(笑)」。

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掲載: 2003年08月21日 17:00

ソース: 『bounce』 245号(2003/7/25)

文/駒井 憲嗣