こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

インタビュー

Chingy



「〈チンギー〉ってのは、仲間の間で使ってたスラングで〈カネ〉のことさ。例えば、誰かがカネ持ってそうだな(They seem like they got money)って時には〈They kinda chingy〉って感じで使うのさ。響きもいいし、なんとなく俺にピッタリな気がしたんだ」。

 先行シングルとなった“Right Thurr”は瞬く間にチャートを駆け昇り、アルバムもビルボードの総合アルバム・チャートで初登場2位というヒットを記録。生まれも育ちもセントルイスのこの男が、新たなスター戦線に強烈に名乗りを上げた。8歳の頃から自分で曲を書きはじめ、10歳の頃にはスタジオに出入りするようになったというチンギーは、17歳でインディーからCDをリリースしていたという。昨年は地元の大スター、ネリーのツアーでオープニング・アクトを務め、12月にはデフ・ジャム・サウスのリュダクリス率いるディスタービング・ザ・ピースのチャカ・ズールーに認められ、メンバーの一員として迎え入れられた。

 地方都市から大きな成功を収めたアーティストが出現すると、それ以降、同じ地から出てくるアーティストの多くはそのフォロワーになってしまうことも多く、総じて没個性になりがちだが、チンギーに限ってそんな心配は無用。その口ぶりは「俺なりに、俺らしくやる、誰の真似もしない、ってことさ。俺がトレンドを作る。それが俺のオリジナリティーさ」と自信たっぷりだが、アルバムに耳を傾ければ、そんな発言にも納得できるはずだ。ラップのおもしろさ、巧さはもちろん、構成/流れ/テンポなど、アルバムをトータルな作品として意識的に作り上げている印象を強く受ける。

「どの曲の後に何が来るかキッチリ考えなきゃ、いいアルバムにはならないよ。ただ曲を放り込んでアルバムを作ったって意味はない。リスナーはアルバム全部を聴くためにアルバムを手にしてるわけだし、曲を飛ばして聴いてほしくもないしね。だからすべての曲を冷静に聴いて並べ替えたり、全体のフロウを考えてアルバムを完成させたんだ」。

 その一方、リリックについてはそこまで深くは考えていないようで、「その時感じたことを正直に書くだけさ。俺はその時の気分のままに曲を書いてるし、それぞれの曲の内容、タイトルから俺のその時の気分を読み取ってもらえるはずさ」と話すように、女の子がテーマの曲や、実体験に基づいた曲など、単純におもしろい曲が用意されている。

「(“Right Thurr”は)プリティーでナイス・ボディーの女の子のことを歌った曲。クラブでカワイイ子が自分の横を通り過ぎていくときに〈Man, look at the girl right thurr!(そこの子見てみろよ!)〉って言うだろ?
 だから“Rigth Thurr”ってのは、可愛い顔、ナイス・ボディー、魅力的な性格をしてる、そういう女の子の定義、みたいなものさ。他にもたとえば、“One Call Away”は俺が実際に経験したシチュエーションを書いた。ある女性と出会って、楽しい時を過ごして、会いたいときには〈One Call Away(電話一本くれればいい)〉、自分の気持ちに正直に、他の連中の言うことなんて聞かなくていいからさ、って気持ちを込めたのさ」。

 トラックを手掛けたのは地元のプロデュース・チーム、トラック・スターズ(1曲だけDJクイックが参加している)で、彼らの高品質で現在のトレンドを消化しつつもクリエイティヴィティーに溢れたトラックも素晴らしい。

「俺の目標を達成するために頑張る、それだけさ。アルバムをもっと売って、カネを儲けて、そのカネで映画を作るとかはみんなやってるけど、何かに投資してまた儲けて、いつか自分のレーベルをスタートさせたいんだ」。

 チンギーという新たなスターの登場によって、ふたたびセントルイスの街は活気づいている。

PROFILE

チンギー
セントルイス出身。幼い頃から地元中心に音楽活動を始め、ネリーのオープニング・アクトなどを務めて注目を集めるようになる。その後、リュダクリスのマネージャーでもあるチャカ・ズールーに見い出され、リュダクリスが率いるディスタービング・ザ・ピースと契約。活動の拠点をアトランタへと移す。2003年5月にリリースしたデビュー・シングル“Right Thurr”がビルボードのポップ・シングル・チャートで最高4位を記録。スヌープ・ドッグやDJクイック、マーフィー・リーらが参加し、本国ではすでにゴールド・ディスクを獲得しているファースト・アルバム『Jackpot』(Disturbing Tha Peace/Priority/Capitol/東芝EMI)の日本盤が9月3日にリリースされる予定。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年09月04日 17:00

更新: 2003年09月04日 20:56

ソース: 『bounce』 246号(2003/8/25)

文/高橋 荒太郎