インタビュー

Thalia


 これってジェニファー・ロペス? はじめて“I Want You”のプロモ・クリップを観てそう思った人も多いはず。バウンシーなリズムに軽快なヴォーカル。スパニッシュ訛りの英語がなんともキュートでセクシー。下敷きになってるトラックはビッグ・パニッシャーだし、ファット・ジョーまでラップで絡んでいるとくれば当然だろう。でも、あれれ? よく見たら、ブロンクスのストリートを闊歩している彼女は最近のグラマラスなJ-Loよりも素朴な感じで……そう、彼女こそが、J-Lo、シャキーラ、エンリケ・イグレシアス、リッキー・マーティンに続けとばかりに登場したラテン界のスーパースター、タリアなのである。いまやマンハッタンを歩けば街中に彼女のポスターが溢れていて、行き交う人々を思わず振り返らせている。

 出身地メキシコでは幼くしてポップ・グループに参加。あっちじゃ連ドラの女王としてもお馴染みで、これまでにソロ・アルバムを9枚も発表しているという大ヴェテランである。そんな彼女が満を期して発表するのが初の英語アルバム『Thalia』。世界進出の準備は整ったというわけだ。

「これは私にとって10枚目のアルバム。すごくワクワクしているの。もちろん母国語であるスペイン語の曲も5曲ほど入っているけど、英語のアルバムは初めてでしょ、とっても嬉しいわ。それに素晴らしい人たちとアルバムを作れたことにもすごく感謝している。デスティニーズ・チャイルドやジェニファー・ロペス、マーク・アンソニーなどと仕事をしてきたコーリー・ルーニーでしょ、クリスティーナ・アギレラやエンリケ・イグレシアスを手掛けてきたスティーヴ・モラレス、それにとってもチャーミングで才能溢れるリック・ウェイク(セリーヌ・ディオンやマライア・キャリーをプロデュース)といった素晴らしいクリエイターに囲まれている。凄い人たちばかりだから心強かったわ。そしてみんなで生み出した結果は、ホントにサイコーよ!」。

 というわけでヒットメイカーたちが結集して作られた今作は、アーバンでヒップでストリート色もちょっぴり加わったゴキゲンなポップス集。アメリカのマーケットを多分に意識したのか、今後ハヤリそうなさまざまなタイプのサウンドがギッシリ詰まっている。が、やはりメキシカンであるという彼女のルーツもしっかり覗かせているところが、タリアのタリアたる由縁だろう。冒頭でも触れたヒット曲“I Want You”でのファット・ジョーとのコラボについては、こんなふうに語っている。

「彼のいいところはラテン音楽にも理解があること。彼ってNYのブロンクス出身でありながら、ラテンのテイストも持ち合わせていると思わない? それって私にとってはとても重要なこと。私たちのコラボはとてもパワフルだったわ。プロモ・クリップを観てもらえばわかると思うけど、2人の間に化学反応が起こったの(笑)」。

 化学反応といえば、タリアは3年前に電撃結婚を果たしている。それもお相手は、マライア・キャリーの元旦那サマであるトミー・モトーラ。それを聞いたら誰もが策略結婚?と勘ぐるところだが、なんと彼女は米国進出に際して旦那のトミー氏がヘッドを務めていたソニーではなくEMIを自分のレコード会社に選んでいる。仕事と私生活は別ってことなのか。そして昨年には2人の姉が誘拐されるが、約1億2,000万円の身代金を払って無事に帰還するという信じられないような事件にまで巻き込まれているタリア。アジア人を思わせる小ぶりでキュートなルックスからは想像できないほど、人生経験は豊かなようだ。秋には自分の名前を冠したファッション/アパレルのブランドもスタートするみたいだし、めざすは次なるマーサ・スチュワート?……ていうのもマンザラじゃないかも。

PROFILE

タリア


71年、メキシコ生まれ。15歳のときにポップ・グループ、ティンビリーチェに加入。17歳になるとイタリアのTVドラマ「Quinceanera」に出演し、女優としてのキャリアを積む。90年にティンビリーチェを脱退し、同年に『Thalia』でソロ・デビューを飾る。その後、2000年作『Arrasando』が大ヒットし、彼女にとってアメリカで初のプラチナ・アルバムとなる。同年にはソニー・ミュージック・エンターテイメントのCEO、トミー・モトーラ(マライア・キャリーの元夫)との結婚も大きな話題となった。先行シングル“I Want You”が話題を集めるなか、本格的な世界進出作となるニュー・アルバム『Thalia』(Virgin/東芝EMI)の日本盤が9月3日にリリースされる。

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掲載: 2003年09月04日 17:00

更新: 2003年09月04日 19:07

ソース: 『bounce』 246号(2003/8/25)

文/村上 ひさし