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インタビュー

赤犬

その噂が地下で囁かれはじめたなか、バカバカしくもエンターテイメント性たっぷりのミニ・アルバム『ばかのハコ船』をリリースした赤犬。過激なまでにノンジャンルな音楽の海を泳ぎつづける、大阪から現れた13人の男たちっていったい何者? 

 1曲目のその名も“親方星条旗”。いわゆるアメリカ国歌的なインストの旋律が聴こえてきたと思ったら、〈宇宙戦艦ヤマト〉みたいな勇壮なマーチを大マジで歌う2曲目“ばかのハコ船”になだれこみ、プログレチックな変拍子に乗せてド演歌なメロを歌う3曲目“ゼニゲバラ”へ……そのあまりの支離滅裂ぶり(&曲名)に呆れながらも、痛快な笑いが込み上げてきてしまう。赤犬のニュー・ミニ・アルバム『ばかのハコ船』は、そんな怪作だ。

「ジャンル的には各メンバー引き出し多いんで、アレンジしていってベタにできるものはベタにしていく。音には趣味をいっぱい入れてますね。意味のない情報がたっぷり(笑)」(和歌頭アキラ、ヴォーカル:以下同)。

 アイリッシュ・トラッド、歌謡曲、スカ、ノイズといったほとんど分裂した音楽趣味をポップに昇華し、曲ごとに万華鏡のように繰り出す大阪の13人編成のビッグバンド、赤犬。ここ東京のライブハウス・シーンでその名前が(笑い付きで)盛んにのぼるようになったのは、ここ1~2年のこと。93年結成以来どのような音楽的変遷を重ねてきたのだろうか?

「5年前ぐらいからやっと固定メンバーになって割とマジメにバカやってるっていう。当初はもっとシュールというか、ノイズとかジャンクとかスカムっぽいことをやってたんですよ。で、もうやりようがなくなってきて。音楽というより宴会芸っぽい感じだった。自由があるとより自由じゃなくて。規制があったほうが自由にできる。割とナンセンス路線を突っ走ってたから、このアルバムではもうちょっと意味のある感じっていうか。じゃあなんの意味だ?って言われるとあり過ぎて説明しようとすると六法全書程になるので一言でいうと、無ですね」。

 往年のキョンキョンを意識したとおぼしき激キュートなアイドル・ポップス“ズキズキ♥ドキュン”は、ひとつたりとて似ている曲がない『ばかのハコ船』のなかで唯一「メンバー全員のコンセンサスが一致している曲」であるということだが、間違いなく本作のハイライトのひとつだろう。

「“ズキズキ♥ドキュン”は処女にならなと思って、セックスもオナニーも2~3ヶ月止めてブルマー履いてレコーディングしました。でも出ないね、CDには。まだ技術が足らん。“全裸♥ブギー”の録音は全裸でしたよ。エンジニアもチン○コ出して。ストイックにやると楽しくない。バカバカしく」。

 その“全裸♥ブギー”での〈全裸でブギウギ、スッポン、ピョン!!〉といった言葉使いや、アイデアの過剰注入ぶりには、モーニング娘。すら彷佛とさせるが。

「モー娘はウチのメンバー半分くらい好きですねぇ。あんまりその話すると解散になるから。一回ライヴ前に討論させたんですよ。朝まで生テレビみたいな感じで。おもしろかったんやけど割と本気になっちゃった(笑)。でもセンスは似てる。つんく♂と近いんかな。あの人も大阪やし。メンバー、モー娘の運動会とか応援しに行ってるもん。金払って。それでライヴが飛んだり。〈運動会があるからライヴやめて〉って言われた(笑)。しゃあないなと思って。それが生きる糧になってるから」。

 本気か冗談かわからない? いやいや。彼らはただ「割とマジメにバカやってる」だけだ。『ばかのハコ船』に隠された以下のメッセージはその証左である。

「好きなことしか人間やっちゃダメ!っていうテーマはありますけど。仕事=好きなことじゃないとダメなんですよ。そういうテーマは隠されてるはずです」。

 なんかヘンなバンドですけど……赤犬は貴重ないいバンドです。

▼ 赤犬の作品を紹介

カテゴリ : ニューフェイズ

掲載: 2003年09月11日 13:00

更新: 2003年09月12日 11:25

文/内田暁男