インタビュー

Matmos

ビョークも惚れ込んだアメリカのエレクトロニカ・デュオ、マトモスのマトモじゃない最新作!


「これはアメリカの原風景とイングランドの原風景を掛け合わせたものなんだ。僕らは60年代のイングランドのフォーク・ミュージックをよく聴いていてね。彼らは過去に注目することで中世のイングランド性を捉えようとしていたんだ。で、僕らの周囲には多くの〈カントリー・ミュージック〉がある。ノスタルジアへのノスタルジアへのノスタルジアへの……というように、たくさんのレイヤーを通って濾過されたものが、この『The Civil War』なんだ」(ドゥルー・ダニエル)。

 マトモスの通算5枚目となるアルバム『The Civil War』が、めっぽうおもしろい。前作『A Chance To Cut Is A Chance To Cure』で、いくつもの整形手術を果たした音をサンプリング・ソースに求めながらキュートなエレクトロニック・ミュージックに仕上げるという離れ業をやってのけた彼らが、ビョークのツアー・メンバーとして多忙を極めるなかで熟成させたアイデア、それは先述したような時空を歪ませた、いにしえへの眼差しだったらしい。しかもタイトルを紐解けば、アメリカの南北戦争とイングランドの市民戦争の二重写しも表看板にあるとのこと。相変わらず幻覚性は強いが、いつになく強く胸に迫るアンサンブル。そこには「私たちは、ビョークの曲をほとんどすべて作り直してきました。加えて、ツアーだけではなく、彼女の『Vespertine』にも同様に関わってきました。そのうえ、この6か月間というもの、彼女の曲をほとんど毎日8時間くらい聴き続けて、彼女の曲をステージで演奏しています。何度も何度も何度も何度も彼女の曲を聴いてきたわけです。というわけで、彼女の曲自体ではなく、その曲の構造に影響されてしまったのです」(M.C.シュミット)という事情もあるにしろ、彼らのソング・クラフティングも堂に入ったもの。デヴィッド・グラブス、レッサーらをはじめとする多くのゲスト・ミュージシャンからのフィードバックも楽曲に反映させた、リヴァーシブル・アコースティック・エレクトロニック・ミュージックの妙。ユーモアというには、あまりにも透徹した彼らのたたずまい。それこそが彼らの真骨頂である、ということだね。うむ、素敵だ。

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掲載: 2003年09月18日 16:00

更新: 2003年09月18日 16:58

ソース: 『bounce』 246号(2003/8/25)

文/福田 教雄