インタビュー

Ben Harper

〈フジロック〉でのベスト・アクト、ベン・ハーパーの最新アルバム『Diamonds On The Inside 』が伝える心地良い解放感とアンサンブル


「みんなと一体になってひとつのサウンドを作ることが大好きなんだ。個人の存在を超えてバンド全体が素晴らしい演奏をした瞬間、自然にあんな行動を取ってしまうのさ」──先日行われた〈フジロック〉でのライヴ。しきりにメンバーとアイ・コンタクトを取り、微笑む彼の答えがこれ。

 今年3月にリリースされたベン・ハーパーの通算5作目となるアルバム『Diamonds On The Inside』がとにかく素晴らしい。いまだに飽きることなく聴き続けている。オープニングを飾る熱いメッセージ(「みずからの手で人生を掴もう、自分に革命を起こそう、と歌っているんだ」)を秘めたレゲエ・ナンバー“With My Own Hands”、ボブ・ディランばりに歌い上げるタイトル曲、ワイゼンボーンを操りギターヒーローと化す“Temporary Remedy”。収録曲すべてに漲る生々しいまでのバンドの息づかい。

「ひとつの部屋にみんなで集まって録音したんだ。 だからライヴ感に溢れているのは当然さ。あと、レゲエやモータウン・サウンドのような〈オーケストレーションされたうえでのシンプルさ〉っていうのはずっと意識してたかな」。

 聴き込むほどに、彼が施したサウンド・マジックが解き明かされる内容になってはいるが、その楽しみを玄人のものだけにしていないことが、この作品の素晴らしいところ。肩の力が抜け、これまでの作品にはなかった開放感に溢れているのだ。

「でも僕は心の中から溢れてくるものを音楽にしているだけで、誰が聴くかは気にしていない。僕の音楽はメインストリームから外れているかもしれないけど、なんか大勢を引き込む力があるんだろうね」。

 バンドとの和を尊重し、自分の音楽と真摯に向き合う。彼の視界は澄みきっていた。そんなベン・ハーパーが大切にしているものを知りたい。

「……直感……家族、……バックギャモン(笑)、大好きなんだ」。

 えっ? 音楽は?

「音楽は、自分の存在意義(Reason For Being)そのものさ。音楽がなかったら、僕たちはみんな死んでるよ。……これ、曲のタイトルにいいね。ちょっとメモっててもらえるかい?」。

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掲載: 2003年09月18日 17:00

更新: 2003年09月25日 18:10

ソース: 『bounce』 246号(2003/8/25)

文/武山 英丈