インタビュー

David Bowie

軽いステップでロックンロールを前進させた、デヴィッド・ボウイのニュー・アルバムが登場!!


 過去の名盤が続々とリイシューされているデヴィッド・ボウイだが、この人の最新の動きというのは過去の伝説に劣らずユニークで興味深い。最新アルバムのタイトルはズバリ『Reality』。ヴァーチャル・リアリティーに始まってリアリティーTVに至るまで、いまこの〈リアリティー(現実)〉という言葉ほど現実感を失った言葉というのも珍しい。

「アルバムには特にコンセプトはないんだ。〈リアリティー〉をタイトルに掲げたのは、いまとなってはこの言葉自体が〈ベタでウソ臭い三流のもの〉を指すようになりつつあるからさ。それを逆手に利用して、もっとメチャクチャな使い方をしようかなって」とペテン師のような口調で答えるボウイ。そして、そのあとに続けて「所詮はロックンロールさ」と言って煙に巻くことを忘れない。

 前作『Heathen』で22年ぶりにいっしょにスタジオ入りしたトニー・ヴィスコンティとは再び共同プロデュース。バックのバンドも去年のツアー時とほぼ変わらない。

「このアルバムは僕たちのステージのサウンドを反映している。我ながらとても気に入っているんだ。時折密度が濃くなって広大で複雑になったかと思えば、まったくその逆方向に向かってミニマルになったりもする。その両極端を共存させることが果たしていいものか初めはよくわからなかったが、どうやらうまく収まっているようだ。いいんじゃないのかな(笑)。アルバムの仕上がりにはとても満足しているよ」。

 ライヴ感溢れるサウンドの中、ボウイはしなやか、かつ軽やかに躍動する。ロック・オペラ的な展開が随所で復活している点もファンには嬉しいところ。前作から1年3か月というハイスピードで届けられた新作ではあるけれど、またもや新たなページを捲ってしまったボウイ。というより、そういう大袈裟な姿勢で構えることなく、創造性を思い切りぶつけたのがこの新作。つまり「所詮はロックンロール」ということだ。

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掲載: 2003年09月25日 17:00

ソース: 『bounce』 247号(2003/9/25)

文/村上 ひさし