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インタビュー

The Rapture


 ラプチャーの名を世界に轟かせた大ヒット曲“House Of Jealous Lovers”。当然我が国日本でも、ハウス・シーンの目利き、MOODMANのDJミックス収録やプレイグループのレーベル、アウトプットからのライセンス・リリースなどもあって、高支持を受けることとなった。しかし、その楽曲を発表したラプチャーとは、実は4人組のロック・バンドであるということが判明するまで、かなりの時間を要したこともまた事実。往年のデヴィッド・バーンを彷彿とさせる甲高くヒステリックなヴォーカル、どこまでもソリッドでパンキッシュなサウンド、されど確実に4つ打ちをキープするビート……そう、彼らはたった一曲でハウスとパンクの間に立ちはだかる厚い壁をブチ破った。かつてランDMCが“Walk This Way”で、エアロスミスがいる部屋の壁をブチ破ったように。ラプチャーのサウンドの2大要素であるポスト・パンクとハウスについて、バンドの中心人物であるルーク・ジェナー(以下同)は「ポスト・パンクがリアルタイムだった頃、僕らはバンドとして存在していなかった。だから僕らにとって、それはノスタルジックでもあるし、フレッシュでもある。現在、ポスト・パンクをきっかけにして、おもしろいことをしようとしているバンドはたくさんいる。当時のみんなは、ひとつの絶対的な音楽ではなく多種多様なタイプの音楽にはまっていた」と海外のインタヴューで語っている。

 そんなポスト・パンクに影響を受け、「PILやキュアーに入れ込んでいたし、ダークでヘヴィーな美学を持っていた」彼らがハウスと出会ったのは、99年にルークがNYに移り住んだ際、「友達のハウスDJの家に泊めてもらって、そこにあるレコードを片っ端から聴いていた」ことがきっかけだった。そして「平均的なインディー・ロック・キッズは新しいレコードにダンスの要素があると、すぐ 〈これはダメだ〉となる」アメリカにおいて、まずはジャンルの壁を突破。以上を語るうえで、いまもっともスリリングなプロデューサー・チーム、DFAとのコンビネーションも欠かせぬ点であろう(DFAの片割れ、ジェイムス・マーフィーのユニット、LCDサウンドシステムも今後大注目!)。

 そして、そのDFAによる全面プロデュースのもと、去年6月には完成していたというニュー・アルバム『Echoes』がリリースされた。“House Of Jealous Lovers”路線のソリッドなポスト・パンク+ハウス・ビートな“The Coming Of Spring”“Sister Saviour”、打ち込みを全面に打ち出したハウス・チューン“Olio”“I Need Your Love”“Killing”、ソリッドに磨かれたパンキッシュ・チューン“Heaven”、胸を締めつけるようなバラード“Open Up Your Heart”、そして“House Of Jealous Lovers”も収録されたヴァラエティーに富んだ傑作となった。パンキッシュな要素とクールなハウス・ビートをエッジを失うことなくまとめ上げたDFAの手腕はもちろんのこと、今年の〈SUMMER SONIC〉で観せたライヴ・バンドとしての力量も今作を傑作たらしめた要素であることは間違いない。

「“House Of Jealous Lovers”のヒットもあったから、クラブ・シーンでも人気が出ることは予感していた。(今年、イビザでライヴをやったけど)クラブでライヴをするのは不格好な感じだよ。でもクラブ・ミュージックも死んだいま、カッコ悪いことをするほうがよっぽどおもしろいんだ」──この『Echoes』が、〈カテゴリー〉の名のもとに分断されつつあるロックとクラブ・ミュージックの壁を粉々に粉砕する起爆剤となることは必至である。

PROFILE

ラプチャー
98年結成。サンディエゴ出身のルーク・ジェナー(ヴォーカル/ギター)、ヴィト・ロコフォーテ(ドラムス)らで母体となるバンド活動を開始させる。その後、マティ・セイファー(ヴォーカル/ベース/キーボード)、ゲイブ・アンドルッツィ(サックス/キーボード/パーカッション)が加わって現在の4人組となる。活動の拠点をNYに移した彼らは、プロデューサー・チーム、DFAと共同制作をスタート。2002年にシングル“House Of Jealous Lovers”などを発表し、あらゆるメディアから高い評価を受けることとなった。レーベル各社が争奪戦を展開するなか、先ごろ現在のレーベルと契約。メジャー・デビュー・アルバム『Echoes』(Mercury/ユニバーサル)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年10月02日 11:00

更新: 2003年10月02日 18:46

ソース: 『bounce』 247号(2003/9/25)

文/石田 靖博

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