インタビュー

JUDE

さまざまな風景が音のなかで浮かんでは流れていく、ロード・ムーヴィー的趣きのニュー・アルバム!


 JUDEのニュー・アルバム『Highway Child』を聴いていると、まるでロード・ムーヴィーでも観ているかのような気分になってくる。舞台がどこに特定されてるわけでもなく、時間軸もいつに設定されてるわけでもない、でも、場面はどんどん流れていくような。そこに見えるのは、浅井健一の記憶から生み出された世界観だろうか。

「毎回同じ考えだけど……何にも囚われず、まったく新しいアルバムを作ろうとは思ってた。コンセプトは?って訊かれたら〈自由〉ってことかな。芸術を作るときには壁があっちゃいけなくて、結局、音楽のうえでは何にも囚われず、カッコ良くなればそれがすべてだから。そんなのあたりまえのことだよね。オレはあたりまえのこと言っただけで。あとは良いアルバムを作りたいって気持ちがあるだけだな」。

 ハワイと河口湖でレコーディングされた今回の12曲。ヴァイオリンの響きが曲の壮大さを際立たせる“ARABIA”に始まり、スリリングなロカビリー風の“Wild Bebi”と、冒頭からまったく異なった表情のナンバーが続く。さらに、浅井ならではの鋭さを持ったロック・ナンバーもあれば、先行シングルとなった“海水浴”のようなノスタルジックな雰囲気を漂わせるナンバーもある。“葉っぱのおうち”はUAがコーラスで参加し、“アクセル”は疾走感溢れるポップなアコースティック・ナンバー……といった具合に新鮮な一面も見せる。まさに、〈カッコイイものをめざすうえで何にも囚われない〉、という彼の意志が見事に反映された作品である。そして、ギターの響きもさることながら、今回とくに印象なのは、随所で聴かれるコーラス・ワークだ。

「今回、コーラスがいいかな、と。“新しい風”のコーラスとか綺麗に録れたし、“海水浴”や“エメラルド”とかもね。最近、コーラスにハマってて。曲の雰囲気がガラッと変わるから楽しくてね。結局、聴きたいものって、パンクとか衝撃的なものもあるけど、心地イイものも聴きたい。人間にとっていちばん心地イイものって、人間の声なんだよね。ほかの楽器にももちろん心地イイものがいっぱいあるだろうけど、声がどんな楽器よりも強いから。声で表現するっていうことは、これからの作品の方向性にも関わってくるかな?」。

 さて、アルバム・タイトルの『Highway Child』には、浅井自身が過去に感じた気持ちが込められてるという。アルバムを聴いて感じる、どこか郷愁を誘う感覚は、ここにも表されていたのだ。

「昔、名古屋でひとり暮らししてたころ高速道路のそばに住んでて、24時間、車の音が聴こえててさ。みんながいるときは気になんないけど、夜ふと我に返ったときに聞こえると物悲しげでさ。そのころの気持ちというかさ、夢はあるけど独りで寂しかったり……そういうことを思い出して。まあ、子供でもなかったけど……ハタチぐらいのころかな。名古屋インターのすぐ横で、上に地下鉄が走っててさ、ゴーッて音が聴こえたんだよね。でも、それがいい感じだったな」。

▼JUDEがこれまでにリリースしたアルバムを紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年10月02日 12:00

更新: 2003年10月09日 18:16

ソース: 『bounce』 247号(2003/9/25)

文/土屋 恵介