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インタビュー

いい風吹くのを待って……

作詞家・松本隆は、自身のレーベル〈風待〉からどんな新しい風を送ってくれるのだろうか?


 はっぴいえんどに始まり、太田裕美、松田聖子、最近ではKinki Kidsなど、風味豊かな〈ことば〉で、日本の音楽シーンに大きな足跡を残し続ける作詞家、松本隆。そんな彼がこのたび、自身のレーベル〈風待〉を立ち上げた。

「注文が来たら、そこから選んで仕事をする……世の中がうまくいってると、たぶんそれでもいいんですけど、音楽というか日本の文化がどう考えてもヘンな方向に進んでるような気がして。それは少し流れを変えたいなってね。基本的に、日本の土着のものが、オリジナルなものが少ない。いつまで経っても外国の真似から抜けきれない気がするのね。業界全体を鳥瞰してみると、誰もはっぴいえんどを超えてないんじゃないかなって。いまのものをアタマからけなすつもりはないんだけど、ちょっと表面的なカッコ良さに囚われすぎてて、それがメディアに利用されてる感じがする。もうひとつ、作品的に残ってない。いくら売れたとしても、残せないというのは失敗だと思う。僕は売った詞を残したから、ある程度は……といっても僕は50過ぎてるし、昔みたいには頑張れないわけですよ。やることやったし、結果出したし、作品も残ったし、まあ、それで自分は責任を果たしからそれでいい、っていう時期もあったんだけども、最近になってから次の世代に伝えてあげるのが親切かなあって思い始めて」。

 そんな風待から手始めにリリースされるアーティストは……明快なギター・サウンドに絶妙な言葉を転がすスリー・ピース・バンド、キャプテンストライダムがひとつ。ヴォーカル、永友聖也の瑞々しい歌声は、ほんのり大滝詠一風味だったり。もひとつは、acoustic dub messengers、EGO-WRAPPIN'、cep、mi-neなどにも携わる菅沼雄太を中心としたneuma。幻想的な音を響かせるクァルテットをバックに紡ぐ、繊細で透明感のある柴理恵の歌声と表現力には息を呑まされます。いずれもウェブサイトの公募で寄せられた2,000組以上のなかから選ばれたアーティスト。今後も精力的にリリースを続けていくそうです。さて、どんなアーティストが送り出されていくのでしょうか?

「〈第二の〉っていうのは嫌いだね。第二の松本隆も要らないし、第二の松田聖子やはっぴいえんども要らない。独自性のないものはやらない。それが僕のポリシーだし、〈風待〉はそういうものを出していく」。

▼このたび風待からリリースされた作品。

▼作詞家・松本隆といえばコレ!

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年10月16日 19:00

ソース: 『bounce』 247号(2003/9/25)

文/久保田 泰平