インタビュー

スキマスイッチ

スキマ? スイッチ? アフロ? 不思議だらけのポップ・ユニットが放つデビュー作完成!!


 とてもメロディアスなその歌は、ある日突然、TVから聴こえてきた。まるで思春期の青さと壮年期の艶っぽさを同時に抱えたような良い歌声。誰が歌っているんだろう? 思わず振り返ったブラウン管に見たもの――強烈なアフロ・ヘアとフザケた名前。〈ス、スキマスイッチぃ~!?〉。ともに名古屋出身という以外、趣味も性格もまったくバラバラ。「唯一、合ったのが音楽センス」という常田真太郎(ピアノほか)と大橋卓弥(ヴォーカル/ギターほか)が、いわゆる誰もが良い歌だねと頷くような〈ポップスの王道〉をめざして結成したユニット。いろんな意味で〈侮れない〉、絶妙なギミック精神を持った2人組だ。

「嬉しいですね! 〈侮れない〉って言葉、すごく好きで。僕らにとっては最大の褒め言葉だったりするんですよね(笑)。だいたい、名古屋人というのは見栄っぱりでケチで寂しがり屋で……でも人には絶対にそういう部分を見せないってところがあったりもして、もしかしたらそういう気質は僕らの歌にも流れてるかも!?」(常田)。

 実は冒頭述べた〈その歌〉とは、彼らのシングル“view”のことで、全国30局以上でのパワー・プレイを獲得して、そのセンスとアレンジの妙については多くの人が支持したわけだが、それに輪をかけて〈しまった、ヤラれた!〉と思わされたのが、リリースされたばかりのデビュー・ミニ・アルバム『君の話』。それこそ、名前も名前なら技も技。大橋が「最初にポップスとして影響を受けた」と語るビートルズさながら、〈気付く人が気付いてニヤリ〉な仕掛けが〈行間〉――言い返れば、歌の〈スキマ〉――にいくつも施されていて、彼らのポテンシャルがまだまだ無限であるのを強く感じさせてくれる。

「ビートルズの何が好きかって、フザけてるところが好きなんですよ。ちょっと人をバカにしてるというか、音楽で遊んでる感じがすごく自由でいいなと思う」(大橋)。

「僕らとしてはそういうギミックとかギャップ感とかを含めて、いろんな人にいろんな楽しみ方をしてもらえたらな思ってるんです」(常田)。

 要するに、何事においても必要なのは〈スキマ〉というか、適度な〈ゆとり〉。

「たとえば忘年会で“君の話”を上司の前で歌っちゃう、なんて人が出てきてもおもしろいんじゃないかな」(大橋)と言えるお茶目な遊び心が、これからのスタンダードになっていくのかも。とにかく侮れないこの〈スキマ〉だけは塞がないように(笑)。

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掲載: 2003年10月23日 12:00

更新: 2003年10月23日 16:34

ソース: 『bounce』 247号(2003/9/25)

文/なかしま さおり