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インタビュー

Darkness (The)


「ある晩、俺は歌うためにこの世に生まれてきたって気づいたんだ。そう、ロック・スターになるために生まれたんだってね。これこそが自分の天性だと悟ったんだ」──こんな、まるで70年代のロック雑誌から引っぱり出してきたかのような言葉を吐いてみせるのはジャスティン・ホーキンス。今、英国の音楽シーンを騒々しく塗りつぶしているダークネスのフロントマンである。その発言同様、必ずしも歴史上斬新なカタチをしているわけではない彼らのロックは、時代錯誤も甚だしすぎると流行の先端へと転じることがあるのを実証するかのように老若男女からの熱烈な支持を集め、各音楽誌の表紙を飾り、デビュー・アルバムの『Permission To Land』は、まさかの全英チャート首位獲得に至っている。その成功要因について、彼はこう語る。

「要は俺たちが新鮮だから、新しいことをやってるからさ。他のどのバンドとも違うことをね。最近、巷にはダウン・ビートな曲ばっかり溢れてるだろ? そんななかで俺たちのハデハデな曲が魅力的に感じてもらえたってことなんじゃないかな」。

 あえて言うならAC/DCのリフの上にポップ・ソングを乗せ、それをスティーヴン・タイラーがフレディ・マーキュリーの声で歌っているかのような。今様に解釈するならダットサンズやアンドリューW.K.と同類項という見方も可能かもしれない。が、ひとつ確かなのは、彼の言葉どおりこれがメチャクチャ新鮮だということ。単に伝統的なわけでも回顧的なわけでもなく、彼らなりにリアルだということである。参考までにジャスティンは〈自分たちの音楽を語るうえで欠かせない3枚のアルバム〉として、エアロスミスの『Pump』、クイーンの『Jazz』、フォリナーの『4』を挙げている。

 バンド始動は2000年のこと、メンバーはジャスティンと彼の実弟にあたるダン、そしてエド・グラムにフランキー・ポウレイン。ホーキンス兄弟とフランキーは以前、エンパイアという「80年代的プログレ・ポップ・バンド」で活動を共にしており、そこでジャスティンはキーボードのみを担当していたという。しかも彼の出発点はギタリスト。そんな彼にフロントマンへの転向を決意させたのは、ダンの「兄貴がシンガーになるべきだ」という一言だった。パブのジュークボックスから流れるクイーンの曲に合わせて踊り、その場に居合わせた客たちをエンターテインしてみせる兄の姿に、弟はロック・スターの天性を感じ取ったわけである。

 で、そんな逸話からも感じずにいられないのは、果たしてこの連中がどの程度マジなのかということ。イロモノとまでは言わないまでも、ある種のパロディー精神みたいなものもきっと活動動機の一部になっているんじゃないかという気がする。で、あえて率直にそう指摘してみると、ジャスティンは「ああ、両方だよ」とスンナリ認めた。

「俺たちは曲作りに関しては大マジだし、演奏することに対するプロ意識もある。実際、努力もしてるよ。だけどあんまりマジになりすぎてもしょうがない。だってショウは楽しいものであるべきだろ? 楽しむためにみんなお金を払って観に来るんだろ?」。

 そして事実、彼らに成功をもたらしたのはライヴ・アクトとしての定評の高さであり、それを支える実力なのである。11月には早くも初めての来日公演が実現するが、そこでまさに、このバンドの実像があきらかにされることになる。「日本ではなにをやっても初体験になるだろうし、どういうことが待ち受けているのかワクワクしてる」と語るジャスティン。こういうバンドが表舞台に立っている事実そのものに、僕もまた、いまだかつてないワクワク感を味わっている。

PROFILE

ダークネス

  ジャスティン(ヴォーカル/ギター/シンセ)とダン(ギター)のホーキンス兄弟は、幼いころより共にバンド活動をしていた。そして、2人が学生のときにフランキー・ポウレイン(ベース)、エド・グラム(ドラムス)と出会い新しいバンドを結成。2000年から、ダークネスと名乗るようになる。その後、ロンドン周辺でのライヴ活動が評判を呼び、同年に発表されたデビューEP『I Believe In A Thing Called Love』は高い支持を受けた。続けてリリースされた2枚のシングルも大ヒットを記録し、今年の8月にはファースト・アルバム『Permission To Land』(East West/ワーナー)を発表。UKのアルバム・チャートでは、No.1の座を獲得している。このたびその日本盤がリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年10月30日 11:00

更新: 2003年10月30日 13:44

ソース: 『bounce』 248号(2003/10/25)

文/増田 勇一